第118話 ティアレーヌの修行

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第118話 ティアレーヌの修行

「その、修行というのは? 」 「【魔王のための地下迷宮】というダンジョンがあるのです。魔王の後継者は皆、そのダンジョンの試練を受けることになっており、最低でも10階層まではクリアしなければなりません」  【魔王のための地下迷宮】……聞いたことがないな。バルロス3世はこのようなことを私に話してくれなかったからな。  ただ話の流れ的には、恐らくゾルニオッティ朝の正統なる後継者のためのダンジョンということだろう。【9月王政下】の魔王はこのダンジョンに一切、関係あるまい。 「そしてティアレーヌ様は、歴代の中でも最高踏破記録を更新し、123階層まで踏破したのです。尚、先代のバルロス3世は25階層までだったと聞いてます。そしてティアレーヌ様を除く歴代魔王の平均踏破階層が19階層だとも」  平均踏破階層が19階層のところ、123階層ときたか。  具体的にはわからないが、どうやら本当に凄いらしい。 「まさかな。歴代最強の魔王と言うことなのだろうか……な? 」 「はい。先代の魔王バルロス3世を軽く超えるほどの実力をお持ちかと。バルロス3世自体、強き魔王が復活したと言われたくらいなのですけどね。バルロス3世の前3代はそろって10階層をギリギリで踏破できたという程度の実力だったらしいですし」  魔王ティアレーヌ……。  私が決闘を申し込んだら、あっさりとやられそうだ。 「ところで、魔王軍の四天王は実際のところどのくらいの実力なのだろうかな? 」  そうだ。  魔王ティアレーヌが規格外の強さを持っているのは間違いないのだろう。では、四天王はどのくらいの強さなのだろうか、私は不意にそれが気になった。 「少なくとも四天王は皆、【魔王のための地下迷宮】の10階層はクリアしております。魔王としての最低限の強さあるはずですね。尚、私は6階層で終わってしまいました」  おいおい。  四天王クラスで魔王レベルには至っているわけか。とんでもないな、これは。仮に今ここで私がレミリアに決闘を申し込んだとしたら、どうなることやら……。  そしてマリーアは6階層と。  彼女自身、魔王になるための試練の半分は超えているでないか。  しかしながら、1つ気になることがある。 「四天王の実力もヤバく、そしてマリーアの実力も何となくわかった。ところで、その【魔王のための地下迷宮】とやらだが、魔王のためのダンジョンなのだろう? 魔王以外の者でも攻略できるのか」 「それは当然可能です。今までは慣習として魔王になる者以外は攻略させなかったらしいのですけどね。もちろんゾルニオッティ家以外の者がいくら攻略しようと、ゾルニオッティ朝の正統なる魔王にはなれないのですけど」 「では、私も攻略が可能なわけか」  是非とも攻略をしてみたいものだ。  果たして何階層まで行けるかな。 「可能ですよ。そもそも現在、魔王軍に入隊する者はその全員があのダンジョンを攻略することになっています。入隊するには1階層は攻略できなければなりません。そして幹部になる者は5階層以上。ちなみにディアナさんは四天王ではありませんが、10階層をクリアしています」 「ユミの姉であるディアナ自体が、魔王クラスの強さがあるのかい! 」 「ええ。魔王軍は皆、個々が強いのです。舐めないでくださいね」 「後でブルレッド君にも言っておくよ」  それにしてもブルレッド君の奴め。  【魔王のための地下迷宮】について何で一切教えてくれなかったのだろうか。魔王軍の兵士が全員攻略したことがあるほど、今ではありふれたダンジョンということだ。国防軍の情報部なら知っているはずだろうに。 「そもそも、カルロさんのような国防軍高官の方なら【魔王のための地下迷宮】の存在を知っているかと思いましたが、その様子だと知らなかったようですね」 「ああ。とても恥ずかしいことに、一切知らなかったな。ただ他の国防軍高官は知っているのだと思うがな。とても恥ずかしくてたまらない」  『天使ナニクソ!』とばかり意識しすぎて、私は【魔王領】の内部でのことに関心が薄れていたわけか。本当に愚かだ。  これでは灯台下暗し的な事案が起きても、私はそれに対処できないかもしれない。
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