≪ミハラン(前半)≫第123話 あちこちでの動き

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≪ミハラン(前半)≫第123話 あちこちでの動き

 さて、プランツ革命政府樹立宣言の翌日。  ミハラン方面軍の第53ゴブリン人連隊は何とか敵を退けることに成功した。特にその第3大隊(一部増援あり)は5000名もの前進を食い止めたのだ。  その後、シタノサソ・リーノ将軍率いる先遣隊も進撃を停止したこともあり、第53ゴブリン人連隊は現在地で待機となる。  今は塹壕を掘って陣地の構築中だった。  しかし他の部隊による戦闘は続いていたのである。  各前線で敵の大軍を撃破した5個師団が、【ミハラン砂漠サソリ大王国】の国土に侵入し、追撃を開始したためである。  これはボブ大将の判断によるもので、各師団が暴走したわけではない。  ただ、1個師団だけは第53ゴブリン人連隊に合流するため移動中だ。  そして、ミハラン方面軍司令部では、ボブ陸軍大将以下上層部たちがこの戦いの引き際を考えていた。 「あまり追撃してしまうと、本当に泥沼化してしまう。区切りをつけて進撃を中止せねばな」 「左様ですね。敵がまだ多く残っていようと、ある程度のところで進撃をやめて、むしろ防御陣地を築くべきです。既に第53ゴブリン人連隊は塹壕掘りを行っております。さらに、同盟国から高値を出して購入した機関銃も設置するとよろしいかと。国防大本営を通して、国防省に要請しましょう」  ミハラン方面軍司令部参謀長のバドリオ陸軍中将がそう言うと、他の参謀たちも頷き異論は述べなかった。 「そうだな」  ボブはそう呟いた。 ※  同じくプランツ革命政府樹立宣言の翌日。  ここは【アリバナ王国】の王都アリバナシティである。  王都アリバナシティには当然、国王アリバナ4世の王城がある。その王城の一室で国王アリバナ4世と王国の重鎮たちが一堂に会していた。  プランツは王国軍主力が壊滅し、仕舞には革命まで起こったのだ。それは隣国である【アリバナ王国】としては最重要課題なのである。 「プランツ革命政府とのコタンクトは取れているのか? 」  国王アリバナ4世はそう言った。  その問に、兵士長の1人が答える。 「いえ。未だ取れていない状況です」  と。 「そうか。これではプランツに援軍を送るのも難しいか。勝手に兵を送って、プランツ革命政府と違えるわけにもいかないからな。しかしながら、プランツ革命の影響で今日もプランツシティはまだ魔王軍の占領下にはないようだ。これは幸いなことだと思う」  だからこそ、この間に【アリバナ王国】は兵力の増強に努めた。王都アリバナシティなどで貧しい者たちを集めて給金を支払い、兵役に就かせたのである。こうして集まったのは500名。プランツ王国と違い、アリバナ王国には準備する時間が与えられたのであった。  だが、傭兵団は中々集まらなかったのである。 「しかし、プランツ革命政府が【魔王領】と同盟を組まないとも限りません。既に【教会】に対しても非難声明を発表しているとか……」  また別の兵士長がそう言った。  さらに別の兵士長が言う。 「陛下。不測の事態に備えて、ここはもっと兵力を増強すべきです! 」  と。 「まて。これ以上、徴兵でもしてみろ。それが原因で革命でも起こったら元も子もない。それに傭兵団も忽然と王都アリバナシティから消えてしまったのだ。これ自体は諸君らも知っていることだろう。聞くところによると他国でも同様の状況らしい。だから今は兵力の増強よりも、巧い作戦を考えるべきだ」  傭兵団が、なかなか集まらない理由はとても単純なことなのだ。  殆どの傭兵団が、姿を消しているからである。  実のところ、これは≪レミリア三騎≫のアルムが命じた魔王軍の工作活動のためだった。  彼は各地のスパイを通じて、ありとあらゆる傭兵団を雇い入れたのである。彼は、数日前にレミリアやディアナが、プランツシティでやったことを参考にしたのだった。    もちろん、アリバナ国王以下、アリバナ王国の重鎮たちは当然これを知らない。そしてこう推測した。  即ち、仕事を求めてプランツへ移動しているのうと。  これは他国でもほぼ同じ見解だった。 「だが兵力を集めるというのは、傭兵を雇うとか徴兵するという以外にもあるだろう。周辺諸国で連合して事に当たるのだ。直ちにマライツ王国、エザレム王国に使者を送りたいのだがどうだろうか? それにマナガーシ地方教会騎士団国の助力も得たいところだ」  アリバナ4世はそう言った。  当然、兵士長たちはこれに賛成する。  これは結果として、アリバナ・マライツ・エザレム三国同盟の結成に繋がるのであった。
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