第124話 マナガーシ地方教会騎士団国とパレテナ王国の動静

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第124話 マナガーシ地方教会騎士団国とパレテナ王国の動静

 プランツ革命政府樹立宣言から5日目のことである。  ここは通称【魔族大陸】と呼ばれる大陸の東の果てにある港町オーシャマリン。  【魔族大陸】から中央大陸へ行くための唯一の玄関口でもある。そして、この港町オーシャマリンにはマナガーシ地方教会騎士団の本部も置かれている。 「総長閣下! 大変です。町のあちこちで炎が上がってます」  1人の若手の騎士がマナガーシ地方教会騎士団総長であるヘルマンの執務室にノックもせず飛び込んできてそう叫んだ。 「そうであるか。では騎士を派遣し、水系魔法を以てして速やかに消化にかかるのだ。慌てるでない。冷静に対処するのだ」  ヘルマンはそう指示を出した。  すると若手の騎士は、今度は執務室を飛び出したのである。これから騎士たちにヘルマンの指示を伝えるためだ。  1人になったヘルマンはこう呟いた。 「魔王軍による仕業か……。我々の動きを封じるための工作と言ったところかな」 ※  プランツ革命政府樹立宣言から6日目。  マナガーシ地方教会騎士団国の領内では前日の港町オーシャマリン放火事件に続き、新たな大事件が発生していた。  パレテナ王国との国境にあるマナガーシ地方教会騎士団国側の関所を、山賊と思わしき者たちが奇襲したのであった。質ではマナガーシ地方教会騎士団が圧倒的に上回っているのの、奇襲によって従士1名と兵士3名が殉死した。  これは、何者かがパレテナ王国に巣食う山賊を動かした結果であった。 ※  同じく6日目。  パレテナ王国の国王パレテナ5世は王国の重鎮2人を集めて、会議を開いていた。 「ついに、我が王国を苦しめていた山賊の一部がマナガーシ地方教会騎士団国の関所を襲撃したらしい。これはとても恥ずべきことである。改めて我が国には力がないということを示してしまったであろう。他国に、そして我が国の住民たちにな」  国王パレテナ5世がそう言った。  パレテナ王国は教会騎士団国家の中で最も貧しい国家だった。それ故か山賊や盗賊共が次から次へと発生し、彼らによってパレテナ王国は苦しめられていたのである。しかも国土の一部は山賊が実効支配するに至ってもいるのだ。  国王パレテナ5世は続けていった。 「そしてプランツ革命という出来事は、我が国にとってはとても脅威になりうる。パレテナ革命が起こらないものか……とても心配だ」  重鎮の1人である王城官吏長が言った。 「いっそのこと、マナガーシ地方教会騎士団国に救援を要請しては? 我が国の兵力はパレテナ各地のものも含めて、たった600人程度。傭兵団も姿を消したことですし、もはやどうにもなりません」 「王城官吏長! 我が王国軍を愚弄するとは何事か! 600人程度とは何だ! 我が王国軍は山賊との度重なる戦闘で実戦経験はあるのだ。少数精鋭という言葉は即ち我が王国軍のためにある」  王宮官吏長の言葉にカチンときたのか、もう一人の重鎮である王宮兵士長が怒りのあまりそう叫んだ。  すると王宮官吏長は王宮兵士長を小馬鹿にするように、言うのだった。 「しかし王宮兵士長。我が王国軍に魔法を使える者はいますか? マナガーシ地方教会騎士団は騎士おろか従士でさえ魔法を使えます。さらに数も我が王国軍よりもはるかに多い。何が少数精鋭ですか? そして魔王軍も魔法を使える者が多いとか。魔王軍との戦闘になったらマナガーシ地方教会騎士団国はともかくとして、我が王国軍はどうなってしまうことやら」 「ううううぅぅぅ! クソ! この野郎! この野郎! チクショウ! 」  兵士長は机を何度も叩きながら、大声でそう叫んだ。  とても子供っぽいが、同時に現実を理解した証拠でもあるだろう。  だが、彼は思い出した。  今は何を話しているのかを。 「ちょっと待て。今の話はあくまでも山賊の対処についての話だろう? 山賊相手なら我が王国軍だけで充分なはずだ」 「では、今日こんにちに至るまで、我が王国内に山賊共が蔓延っているのはどういうことですか! 」 「ならば王都パレテナタウンにいる兵士を根こそぎつれていくまでだ! 」  口論は続く……・  そんな2人を見かねて、ようやく国王パレテナ5世が声を出した。 「2人とも落ち着け。王宮官吏長の言うとおりマナガーシ地方教会騎士団に救援を要請するというのはとても合理的な案だと思う。しかし同時に安直すぎるのではないか。朕が思うに、今回の山賊によってもたらされた事件は魔王軍が関与していると思うのだ」  続けて言う。 「いくら無法者の山賊であろうと、数や質で勝るマナガーシ地方教会騎士団国を襲撃するというのは、おかしい。これは魔王軍による攪乱であると推測できるだろう? もしマナガーシ地方教会騎士団が我が国の要請に応じて救援をよこしたらどうなる? マナガーシ地方教会騎士団が我が国の山賊を掃討しているその間にも、プランツには魔王軍が集まってくるのだぞ」  そして最後に言った。 「何より、魔王軍の企みは恐らくマナガーシ地方教会騎士団の戦力を分散させることだろう」
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