第125話 各国の情勢①

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第125話 各国の情勢①

 プランツ革命政府樹立宣言から7日目。  その革命の地であるプランツでは議席数80にして173名ものもたちが立候補している初の選挙戦が始まっていた。今日から候補者告示が行われ、各候補者が演説をする。  今日から起算すると4日目にあたる日に市民による投票が行われる。  この選挙戦でも調略戦が始まっていた。  まず候補者の一部が事故に遭い不審死を遂げている。これらは、今は革命政府の指示で動いているカルロが送った傭兵団による仕業だ。  事故死するのは、まず【教会】と元々繋がりのあった候補者。  次に【教会】とは元々の繋がりはなかったものの、【教会】などから金銭等の支援を受けていた者たち。  例えばウェプラの町出身の者では地理的要件もあってか、アリバナ王国のスパイから支援を受けていたりする。  これらの者が次々と事故死するのであった。  しかし市民はこれらの事故死に対して、今のところは不審がる様子はない。  そして候補者の謎の事故死とは別に、魔王軍(アルムが主導)が接触し支援する候補者も多くいた。革命政府はあえてこれらの候補者に対しては何もしなかったのである。  これは今後の流れのためでもあったのだ。 ※  同じく7日目。  マナガーシ地方教会騎士団総長であるヘルマンは自身の執務室である決断に迫られていた。今朝届いたパレテナ国王からの手紙が原因だ。  3名の副長たちも集まっている。  副長の1人が言う。 「パレテナ国王の言うとおり、魔王軍がスパイが山賊を動かしているのでしょう。そして我が騎士団の戦力を分散させる意図があるというのも、彼の言うとおりかと。ですからパレテナ国王の言うとおり、我が騎士団は直ちにプランツへ向けて出発すべきかと」  と。  しかし、ヘルマンは彼を叱った。 「そう言うか。ではここが手薄となっている間に、山賊どもが徒党を組んで襲撃して来たらどうするのか」  だが彼は反論するのであった。 「我が騎士団を以てして、レミリアの部隊を殲滅すればそれで当面の問題は解決するのですよ? 山賊などは、魔王軍殲滅勝利の凱旋のついでに皆殺しにしてしまえばよいかと」  これは自国の民を、全く無視した発言だ。戦争で勝利することだけが全てである者の意見である。形としてだけでも民を守るという素振り(そぶり)すらない。  当然、ヘルマンはこう質問した。 「町が山賊に占拠されたら、我が国の民はどう思うか。我が騎士団や【教会】全体に対してマイナス感情を抱かせるのではなかろうか。現にプランツでは【教会】が何もしてくれないのだと、民衆が騒いでいると聞く」  と。  別の副長が言う。 「ここは徴兵しましょう。徴兵した兵たちに、国を守らせるのです。その間、我らはプランツへ向かうべきです」  そして、さらに別の副長も言った。 「そうです。今は魔王軍を叩くチャンスかと。アリバナ・マインツ・エザレムの3王国は即座に同盟を締結し、3王国の総兵力を同時に以てして魔王軍に対処しようとしております。そこに我々も加わるべきです」  副長3人が言い終えたの見て、ヘルマンは言った。 「まず徴兵についてだが、確かにそのとおりかと思う。多少の反発はあるかもしれないが、こういう非常時だ。民衆も黙って従ってくれるであろう」  そして続けて言う。 「しかし徴兵したばかりの兵だけで国を守らせるのも心配だ。付け焼刃的な訓練で山賊に対処できるのか。相手は山賊とは言え、パレテナ王国兵と何度も戦闘を積んで実戦経験がとても豊富と聞く」 「ヘルマン総長! 何も騎士団を根こそぎプランツへ向かわせる必要もないのでは? 」 「いや。私としてはパレテナ国王の言うとおり、戦力の分散化だけは絶対に避けたいと思っている。山賊だけが相手ならともかく、真の相手は魔王軍だ。慎重にならなければならない」  このヘルマンの慎重さはアルムにとっては想定外であり、戦力の分散化を図るには至らなかった。  しかし、結果としてプランツでの局面では、魔王軍にとって有利とさせることになった。 ※  ――― 同時刻のことである ―――  分かっていたことだが、魔王城までの旅は長いものである。延々に馬車に乗り続けるというものは、とても退屈なものだ。  だから先ほどの休憩で、ビールを5杯も飲んでしまった。 「うふふふぅ~♪ 」  だから、気持ちは爽快だ!  「あらら、カルロ。これは結構飲んだようだね? 」  と同乗しているユミが言う。 「おう。気持ちも爽快だ。天使共もまた逃げ出したようだしな」  これからも、何日もかけて魔王軍と国防軍に囲まれながら魔王城を目指して退屈な旅が続くのだ。  飲まなきゃ、やってられないだろう。 「それにしても、天使たちがまたいなくなったの? 」 「まあな。気配が無くなったもんでね。流石に魔王軍と国防軍が私たちに囲んでいるのだ。あちらにとっては引き際だろうな? 」 「ふうん? 」  ユミは何故か、私の顔を覗くように見ると不審そうな表情をするのであった。
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