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≪エレドス≫第127話 上級天使エレドスが行動する
ここは【魔王領】内の東に位置する都市ネプッソ。
この都市のとある家屋で、ある者たちが集まっていたのである。
その者たちとは、共和国守護士と呼ばれる者たちだ。
彼らは【魔王領】が共和政だった時にその権勢を誇っていたものの、帝政への移行と同時に国防軍によって抹殺され或いは生き残った者たちは地下に潜るはめになったのである。
元々、共和国守護士団は【天使領】の息の根がかかっていた組織であり、要は売国奴なのだ。
【魔王領】の市民たちは、国防軍の行いを支持した。
だが、国防軍の抹殺から生き残った共和国守護士たちは【魔王領】の全般に対して、逆怨みをし、頻繁にテロ行為を行うようになったのである。
「ふふふっ。共和国守護士の皆さん。今日はお集り頂きありがとうございます。ふふふふふっ」
と、そんな彼らを今回集めたのはエレドスであった。
エレドスは、都市ネプッソに居る代表格の共和国守護士と接触し、こうして都市ネプッソにいる共和国守護士の全てを集めさせたのだ。
とは言っても、たった数名しかいないので寂しいものである。
「まもなく、ふふふふっ、カルダス・ロムネーがこの都市にやってきます。ふふふふふっ。奴は馬車に乗っていますので、馬車駅で見張っていれば、ふふふふふっ、接触できるでしょう」
「天使様。そうは仰られますが、カルダス・ロムネーが具体的にいつ来るのか判らないわけです。何日も馬車駅で待っていればネプッソ市警に怪しまれます」
と、代表格の風貌を持つ男が言った。
仮に交代で馬車駅付近を見張っていたとしても、日が経てばたつほど、ネプッソ市警や駅馬車の係官、さらに市民たちが不審に思うことだろう。
「ふふふっ。心配することはありません。奴の到着がもう間もなくになったら知らせます。それまでは好きにすると良いでしょう。ふふふふっ」
エレドスには水晶玉がある。
それを使えばカルダス・ロムネーという殺す対象が、いつ頃やって来るか判るのだ。
そして、エレドスは人相書きを一同に渡したのであった。
「なるほど。丸眼鏡とちょび髭が無いと、こんな顔をしているのですか。てっきり40代ぐらいかと思っていましたが、20代後半から30代前半くらいでしょうか……。思ったより若いみたいですね」
代表格の風貌を持つ男が、そう感想を述べる。
カルダス・ロムネーの、本来の顔を知らなかったからだ。
「ふふふふっ。人相書きを用意しておいて良かったですね」
※
その日の夜。
エレドスにしては、珍しく深い眠りについたのであった。
「我に対する裏切り者の子孫よ。調子はどうか? 」
夢の中で、黒い影がそう言う。
「嗚呼。我らの主よ。こうしてまたお会いできて光栄です。私の体調は日に日に悪くなっておりますが、必ずや私の悲願を達成する所存であります」
と、エレドスは黒い影に対し答える。
「そうか。だがせっかく我から業を得たというのに、何故、自ら直接行動しようとしないのか? 我の業を得るには、厳しい訓練と、そして代償が必要だった。お前は業を得たために今、その代償がお前を苦しめている。死も近いだろうに」
「奴に復讐心を持つ者は大勢います。復讐達成は無理でも、せめて機会は作ってあげようと思いました。これは私の本心です。もちろん建前である部分もありますが。もし彼らが本気でしたら、彼らにも力を授けてやってください。そうすれば貴方様の兵隊も増えることでしょう」
「兵隊など今さら要らん。堕ちた時、我に付き従った大勢の仲間がいる。仲間たちは今もずっと健在だ。そしてお前らの先祖を除き、裏切り者は誰1人としていない」
エレドスとしては、上級天使ファアルドたちの前では「直ぐにでも復讐を果たす」という態度で【天使領】を抜け出したものの、それでも同じ復讐心を持つ者たちを何らかの方法で支援したかったのである。
それは復讐心を持つ者が、天使では無かったとしても例外ではなかった。
「左様でございますか」
「ではまたいずれ会おう。天か地の底か、然るべき場所で」
黒い影がそこまで言うと、エレドスの視界はみるみるうちに、明るくなったのであった。
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