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第130話 各国の情勢④
プランツ革命政府樹立宣言から9日目。
パレテナ王国の王都パレテナタウンから山賊討伐のため、250名程度の兵士たちが出発して2時間ほどが経過した頃のことである。
その王都パレテナタウンの付近には、これを包囲するかのように各10人から20人程度の集団が5つほど、即ち総勢80名近くの山賊たちが集まって来た。
各集団には、完全にカバーできているとは言えないものの、集団の人員を守るように防御魔法も展開されている。
これはアルムの命じたプランCによるものだった。
すぐさま国王パレテナ5世のもとへ、その情報は届く。
「陛下。武装した集団が複数、この王都付近に現れました。しかも防御魔法も展開されているとのことです」
と、息を切らしながらパレテナ5世の執務室へやってきた王宮官吏長が言った。因みに王宮兵士長は山賊討伐のため不在である。
「なんと!? なるほど……。恐らくは山賊だろう。我が軍が王都から出陣したのをわざわざ確認して、襲撃にしにきたのか。それにしても防御魔法も展開されているとは……。やはり魔王軍が関与しているのだろう」
「そのようですね。既に弓兵は臨戦態勢に入っております。如何しますか? 」
「うむ。では朕も出でよう。鎧に着替えてくる」
パレテナ5世はそう言って、武器防具倉庫へ向かうのだった。
ちょうどその頃、パレテナ王国の弓兵たちは王都を守る城壁の上から一斉に矢を放った。
放たれた矢は次々と、山賊たちに突き刺さった。
もちろん防御魔法でカバーされている位置にいた者は別だが。
「よおおし! 攻撃は有効だ。再度矢を放つぞぉぉぉ! 」
守備隊兵士長がそう叫ぶと、弓兵は一斉に弓を構えた。しかし、再度矢を放つ前に各所の山賊の集団から攻撃魔法が放たれたのである。
氷系の魔法だった。
だが、城壁に当たるだけで終わる。
「魔法攻撃か! しかし怯まんわ! よおおおし、矢を放てえええ! 」
守備隊兵士長が叫び、再度矢が放たれた。またもや、山賊たちに矢が突き刺さるのだった。
そして、これに懲りたのか、山賊たちは四方八方に逃亡を開始したのであった。
こうして、パレテナ5世が鎧を着こんで城壁に現れた頃には、戦闘は終わったのである。華のある戦闘ではなかったが、山賊側(魔王軍幹部アルムの思惑)としては魔法を使えるという認識をパレテナ王国側に持たされるには充分だったのだ。
案の定パレテナ5世は、山賊討伐に出発した各隊に補強が必要であると考えて、総勢100名程度の増援を送ることを決定したのである。
したがって、王都パレテナタウンにいる兵力は残り150名程度となった。
※
プランツ革命政府樹立宣言から10日目。
マナガーシ地方教会騎士団国領内にある村の1つが、武装した集団に占拠されさらに村人が村から追いだされたという知らせが、騎士団総長のヘルマンに届いた。その村の名は【ナトル村】という。
教会騎士団が治める国ということもあって、この村にも3名の騎士と9名の従士の計11名と、さらに村の自警団もいたのだが、武装集団の魔法攻撃による奇襲によって、それら戦力はあっという間に無力化されてしまったのであった。
もちろん、これはアルムの命じたプランEの実行によるものである。
そして今現在、マナガーシ地方教会騎士団の総長ヘルマン以下、副長たちが集まって会議を開いていた。
「やはり、私が想定した通り、プランツへ騎士団及び兵士たちを送るのを控えて正解だったと思っている。今回の武装した集団による【ナトル村】占拠は、恐らくパレテナ王国に巣食う山賊どもだろう。恐ろしいことに魔法まで使えるというではないか。もし徴兵したての兵士ばかり残していたら、どう対処できたものか」
ヘルマンがそう述べた。
「仰るとおりかと。しかし【ナトル村】の奪還はどうされますか? 奪還するとなると戦力の分散化をすることになります。仮に奪還するとしても、たった数名のみを送るというわけでもありませんでしょうし」
と、副長の中では最も新米である騎士が言った。
ナトル村は【マナガーシ地方教会騎士団国】領内にあるとはいえ、マナガーシ地方教会騎士団本部の置かれている港町オーシャマリンからはそれなりに離れている。
別の副長が反論する。
「お前は馬鹿なのか! 魔王軍四天王レミリアの率いる部隊はプランツのセルテンの町にいるのだ。仮にアリバナ・マインツ・エザレムの3国同盟を下し、さらに隣国パレテナ王国も制圧し、我が国に迫って来たとしよう。それまでの間に、我々は山賊1つも討伐できないと言いたいのか……。ヘルマン総長。総長殿はどう思われますか? こやつの意見に賛同いたしますか? 」
ヘルマンが答える。
「ふむ。確かにナトル村を占拠する武装集団を一掃するだけの時間は充分にあるだろう。ではナトル村奪還を前提に話を続けようと思うが、実は既に私にはある案があってな。それについて述べたいのだが、異議はあるだろうか? 」
副長たちが異議を述べることはなかった。
そして、ヘルマンはその案とやらを述べるのであった。
案自体はとてもシンプルなものである。博打好きが案外、思い付くかもしれない。
そして犠牲者が出ても信仰深き者(信仰が強すぎて過激な考え方になった者を除く)でなければ、そこまで心を痛めることはないような、そういう案だった。
この案に基づき早速、急ピッチで隊の編成が行わるのであった。
またヘルマンは各地にある≪村≫からの強制非難を命じたのである。これによって、≪村≫に住む住人たちは近くの≪町≫に移ることになるのだった。
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