48人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
第131話 各国の情勢⑤
――― プランツ革命政府樹立宣言から10日目 ―――
(ユミ視点)
私は確信した。
それは、カルロが感じるという天使たちの気配に関することだ。カルロはどうやら、アルコールが入るとその気配がなくなるみたい。
逆にカルロが神経質になっているときに、天使たちの気配について質問したら「どうやら天使たちはだいぶ接近してきているようだ」と答えた。
とすると、これはカルロの精神状態によって、天使たちの気配が強くなったり弱くなったりしていると言えると思う。
だけどカルロの感じる天使たちの気配は、決してデマカセのようなものでは無いことは、私はよく知っている。
そうなると、天使たちが何かをカルロに対して謀ったに違いないないだ。
そのように私は確信したのだった。
※
プランツ革命政府樹立宣言から11日目。
この日は、そのプランツで投票が行われる日だ。
この日までに、かなりの数の候補者が事故に遭い死亡している。
そしてプランツ革命政府としては、あえてこれらは純粋な事故ではなく、【教会】が魔王軍を恐れたという理由で事故死に見せかけて候補者を暗殺したというデマを公式見解として発表している。
わざわざ、プランツ革命政府は事故を装って暗殺しておきながら、事故に裏があると発表した。
これは、立て続けに事故によって候補者が死んでいけば、流石に市民も疑うことに違いないからだ。でるから、事故に裏があり、その上でそれらの仕業は全て【教会】の仕業としたのだった。
そして皮肉なことに、【教会】などとズブズブに関係のある候補者たちは表向きには、【教会】や他国に頼らず市民たちだけで国家を守ろうと主張していたのだった。
その結果、反【教会】的な主張は市民に広く行き渡ったのである。
市民たちはこう主張する。
『【教会】は魔王軍を恐れたのではない。【教会】を見限った我々プランツ市民に対して逆恨みをしたのだ。【教会】許すまじ! 』
と。
※
同じ頃。
セルテンの町にはゴルモン部族連合国から【魔王領】を経由して、やって来た傭兵団たちが続々と集結していた。
その数にして、1000名程度。
大小さまざまな傭兵団が集まっていた。彼らはプランツ王国以外の地で、アルムの放ったスパイたちと接触し、こうしてやって来たのである。
各地からやって来た傭兵団たちが、同時に集結してきた理由は、【魔王領】の都市ラバノンで日程調整を受けたからである。実は都市ラバノンで待機させられている傭兵団もたくさんあり、こうしてセルテンの町にやって来たのは一部に過ぎない。正規の軍より傭兵が多く配置されるのを避けるためである。
「続々と集まってきたか。傭兵団を根こそぎ雇うのに、莫大な経費がかかってしまったな。失敗はできない。絶対に」
アルムはそう呟いた。
「レミリア三騎にして、魔王軍上級幹部アルムさんですね? 」
不意に1人の男が、エミリに連れられて来てそう訊ねた。
男は続けて言った。
「ご挨拶が遅れました。僕はハインツ様の部下で、魔王軍幹部のタケルと申します。49名の部下を連れてまいりました。よろしくお願いいたします」
と。
彼らは魔物使いの集団だったのである。
「こちらこそよろしく。レミリア様から話は聞いているよ。ところで、どういった魔物を引き連れているのだ? 」
魔物次第で戦力が変わる。
「それは、各人が好きに使役しておりまして……。ただ各人には10匹以上の魔物を引き連れてくるよう命令を下しました。それで僕の引き連れている魔物は毒タヌキが7匹、【レッドウルフ】が5匹、【五頭蛇】が3匹のの計15匹です」
タケルが自慢げにそう言った。
毒タヌキは素早い上、時々吐き出すことがある胃液が厄介な魔物だ。そして【レッドウルフ】は【ブルーウルフ】よりもタフさは無いものの、攻撃力は同一で、ブルーウルフに比べて繁殖がとても速いことで有名である。
最後に【五頭蛇】は、その名の通り5つの頭を持つ蛇で、長さは2メートルで太さは直径にして10センチ前後ある。噛まれればたちまち毒に犯され、その受けた毒を数分でも放置すれば死に至るが、この太さの蛇に体を絡まれて窒息死することもある。とても危険な魔物と言えるだろう。
「なるほど。それでは最低でも500匹の魔物はいるのか。わかった。ありがとう」
アルムは自分から、どういった魔物がいるのかとタケルに訊ねたものの、魔物に関してあまり理解していなかった。そのためタケルの使役している魔物がどのくらいの強さなのかあんまり判らなかったのだ。
500匹の魔物がいることだけを把握できたにとどまったのである。
最初のコメントを投稿しよう!