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第133話 襲撃者
都市ネプッソに到着して、3時間が経過した。
到着して早々ユミの強い要望で、私はゴブリン人の赤ん坊を背負いつつ、都市ネプッソにある【諸教会】の1つである【ネプッソ市民教会堂】へと行くことになった。
【ネプッソ市民教会堂】の牧師と色々と雑談をした後、私とユミは途中で合流したダヴィドと一緒に都市ネプッソをブラブラと散策している。特に行く当てもない。休みたくなったらディアナが手配した宿屋へ行けばいいのだ。
「カルロ。ここネプッソって、もしかして都市にしては小さいの? 」
「そうだな。大体の都市が10万人以上だ。10万人を下回る都市は早々ない。だが所謂≪教会騎士団国家≫諸国の殆どの王都よりは、ここネプッソの方が規模がある」
「アリバナシティもそこまでの規模はないな」
ダヴィドもそう言った。
例えばプランツ王国の王都プランツシティの人口は1万人程だ。そしてアリバナ王国の王都アリバナシティだと倍の2万人程度となる。
「そうなんだ。でも結局【魔王領】の都市の中では小さい方なんだね」
「結局のところはな。何か思うところがあるのか? 」
「ま、まあね。ネプッソがもう少し大きい都市だと思っていてね……。ちょっとショックだった」
「そうだったのか」
ネプッソが大きい都市だと?
私が、あげた本にもでも書いてあったのだろうか。もしそうなら、あの本はデマを流していることになる。
そして、気づけば小さな通りに入っていた。
……。
小さな通りに入ると、何故か起こることは決まっているようだ。
「カルダス・ロムネー! 覚悟しろぉぉぉぉぉ」
わざわざ大声を出して、自らを晒す必要もなかろうに。
私は、咄嗟にユミとダヴィド、そして自身を守るためドーム状に防御魔法を展開した。そして後ろへと振り向く。
刺客は6人だ。5人が正面に立っており1人は剣を構えたまま尻もちをついている。特に顔を隠すこともなく、全員が男である。そして天使共ではないことが判った。エルフ族やスタンダートによる襲撃だ。
「流石は極悪な戦争犯罪者。この程度の攻撃は防ぐようだな? 」
尻もちをついた者をしり目に、刺客の1人がそう言った。
感じからして、代表格のような風貌だ。
「わざわざ、私の本名を言ってくるあたり、前々から準備していたのか」
私がそう訊ねた。
「そう言うことだ。もう理由は判っているだろう? 」
「まあな」
私はそう言って、防御魔法を展開したまま攻撃魔法を発動する。すると、青い霧のように見える【何にか】が瞬時に発生し、刺客6名に向かっていく。即ち内臓に著しいダメージを与える魔法だ。
「ふん! そんな魔法など効かぬ」
代表格っぽい男がそう言った。そして、刺客5人はそれぞれ防御魔法を展開し、それを防いだ。
「カルロ殿! 自分はどうすれば良いか。前にも話したかもしれないが魔法は一切使えない」
ダヴィドがそう言った。
彼は魔法が使えないので、迂闊に行動させない方が良いだろう。
「すまないが、一秒でも早くここから逃げてくれ。ユミもだ。奴らは質の悪い連中でな」
刺客6名がどういった者たちか、大体わかってきた。
「カルロ殿。聞いた自分が馬鹿だったよ」
ダヴィドがそう言うと、槍を構えて吶喊するのであった。
「馬鹿な! 」
魔法攻撃の餌食にされてしまう。
「私も一緒に行くわ! 」
そして、ユミまでもが走り出すのであった。しかし、私は感動した。ユミは自身とダヴィドを守るための防御魔法まで展開しているのだ。
「喰らえええ! 」
ユミはそう言って、攻撃魔法を発動した。
それは貫通式の攻撃魔法だったのである。
私は呆気にとられた。
「まさか……。≪貫通的威力による攻撃魔法≫なのか? 」
国防軍の歩兵が用いる主な攻撃魔法だ。しかし何故ユミが使えるのであろうか? ましてや実戦経験もないはずなのに。
しかし、感動虚しくユミの魔法攻撃は、刺客の防御魔法で弾かれる。
「この野郎! 」
私も再び攻撃魔法を発動した。
中級水系魔法(簡単に言えば威力の高い放水)である。発動と同時にダヴィドの槍が刺客1人の防御魔法を消し去っていた。その刺客はユミの魔法攻撃を弾いた者と同じ者だ。
他の刺客は内2人が、私の中級水系魔法で牽制されて身動きがとれていない。そして1人はダヴィドを後ろから脇から攻撃しようにも、ユミの放った防御魔法で弾かれたのである。
残る2人が私に矛先を向けていた。
内、1人は代表格っぽい風貌の者で上級火炎系魔法を放ったのである。たちまち、大きな炎の渦が私を襲おうと発現される。中級とはいえ水系魔法ですら、抑されている。水では消えない炎なのだ。
しかし、これなら防御魔法を補強せずとも弾くことは可能であろう。
案の定、大きな炎の渦は徐々に威力を失っていき、消えた。左右にあった建物の外壁が黒く焦げている。
中にいる人は大丈夫であろうか?
それに、巨大な炎の渦自体は消えたが周辺が火事になっているかもしれない。
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