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第1話 旅の始まり~ 新勇者のパーティメンバーに任命されてしまいました
【アリバナ王国】の王都アリバナシティには大きな大聖堂がある。その名はアリバナシティ大聖堂という。
そのアリバナシティ大聖堂で今、勇者を任命するための儀式が行われている。
とはいっても、ここ数年で何度も勇者任命の儀式が行われており、極めて簡易的で短時間で終わる予定となっているのだ。
「ユミよ、貴殿を勇者として任命する」
この大聖堂の最高責任者である大司教がそう宣言すると、見るからに【聖剣】と言いたくなるような形の剣を、黒髪のショートヘアで150㎝ほどの背丈の少女に授けた。
このユミと言う名前の少女が、今回勇者として任命された者なのだろう。
ユミは【聖剣】らしき剣を受けとると、一礼し一歩後ろへと下がった。
まあ、形だけは良くても、実戦で役に立つかはわからないがな。
「勇者ユミよ、魔王討伐の任務を与える。今から紹介する者たちともに、この任務を何としても達成するのだ」
半年前にも勇者が選任されたそうなのだが、噂によるとその勇者が集めた旅の同行者が皆、魔王の手先だったとされている。
これにより【教会】が勇者自身の選任以外にも、その旅に同行する者についても決定するという方針になったそうだ。
そして、色々あってこの私もその1人として選ばれてしまったのである。
「今から紹介する者たちは、そちらに並んでいる者たちだ」
大司教はそう言うと、続けてダヴィド、マリーア、カルロ、と3人の名前を読み上げた。カルロというのが私の名前である。
まあ偽名だがな。
そして私は他の2人と同様に勇者の目の前へと移動した。
「これらの者が、貴殿を支える者たちだ。さて、以上で儀式を終わりとする」
大司教がそう宣言し、儀式が終わると神父やシスター、さらに聴衆も大聖堂を後にする。
普通なら勇者となったユミが『神に対して宣誓』や『これからの意気込み』などを発言する時間が設けられているはずなのだが、これで終わりなのである。
大司教も、旅に必要な金銭が入った袋をユミに渡して大聖堂を後にした。
結局、私たち4人を残して誰も居なくなり、4人揃ってぎこちない雰囲気が少し続いたところで、ようやくユミが一番初めに自己紹介を始めた。
「あの! 初めまして、ユミ・ルベーグと言います。これからよろしくお願いします」
ユミが自己紹介を終え、今度はガッチリとした体形の男性が口を開いた。
「自分はダヴィド・レオドーだ。アリバナ王国の王宮兵士長を務めているが、国王陛下の推薦と命により、勇者ユミ殿に同行することになった。よろしくたのむ」
つづいて、茶髪のロングヘアで、そして如何にも魔法使いのような格好をした女性が自己紹介を始めた。
表情からして20代そこそこと言った感じである。
「私はマリーア・ヨーナスと申します。冒険者ギルドを介して、攻撃魔法士として様々な仕事を請け負っていました。よろしくお願いします」
攻撃魔法士というのは、攻撃やその支援を専門とする魔法士のことである。そして、魔法士には回復を専門とする回復魔法士というのも存在する。
両魔法士は【魔法士協会】が課すそれぞれの試験に合格した上で、登録することで各々の魔法士としての資格を得ることができる。しかし、【魔法士協会】は基本的に仕事を斡旋することは殆どないので、魔法士たちは冒険者ギルドに加入してそこで仕事を得るのが通常のスタイルとなっているのだ。
そして魔法士協会と冒険者ギルドは、共に【教会】の外郭団体であり、その影響も少なからずある。
因みに【魔王領】には独自の魔法士協会や冒険者ギルドがあるのは、ここだけの話だ。
「私はカルロという。攻撃、回復と両方の魔法を一応扱うことはできる。ただ、どちらとも魔法士の資格は有していないから、そこは注意してくれ。まあ、これからよろしく頼むよ」
私も自己紹介を済ませて、これで一応は4人とも自己紹介が済んだ。
そして……
「あの、早速なのですがこれから旅が始まると思いますし、武器とか道具とか階に行きません? 」
と、ユミが提案してきたのである。まあ、これから旅をする以上は当然の流れだろう。と言いつつもダヴィドなんかは、王宮兵士長を務めているだけあって既に武装している。
幸い【教会】が民衆からだまし取って懐に入れたカネの一部を、ユミに寄越してくれているのでカネの心配もない。
まあ私は元々、カネの心配はないが(現金は殆どないけど)。
「私は賛成だ。幸い【教会】からお金を頂いたわけだし、使わないことはないだろう」
私は賛成した。
「そうですね。私は予備のロッドを揃えたいと思っていましたし」
「自分も賛成だ。武器と防具は予備も含めてあるが、旅用品が一切なくて困っていたところでな」
と、マリーアとダヴィドの2人も賛成する。
何というか全員が賛成したのでまずは、これからの旅に必要な武器・防具や、その他の道具を揃えるということで決定した。
まあ、私は別に準備しておきたいことがあるのだが……ともあれ、こうして旅の第一歩が始まったのである。
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