第4話 準上級モンスター毒タヌキとの戦闘

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第4話 準上級モンスター毒タヌキとの戦闘

 マリーアはユミを制止したものの、それは無意味に終わった。それはもちろん、悪い意味でということである。 「はあっ!! 」  ユミは毒タヌキの一匹に剣で斬りかかった。しかし多少は掠り傷を負わせたものの、毒タヌキは素早い動きでよけて見せたのだ。  それに続き、他の複数の毒タヌキは爪を伸ばしてユミの顔面を目掛けて飛びかかってきたのである。 「くっ! 」  ユミは咄嗟に左腕で攻撃を防いだものの、その結果当然なことだが袖は引き千切られており左腕から出血しているのが見えた。  ユミは盾と鎧、そして兜も装備していない。  装備しているのは旅用品にとして特別に仕立てられている服(当然戦闘に於いて耐えられると保障されているわけではない)と革製の籠手くらいである。 「何をしているんだ。ユミ、後ろへ下がれ。早くしろ! 」  私は咄嗟に指示を出し、毒タヌキを目掛けて中級火炎魔法を発動させた。これで、2匹は倒すことができたものの、まだ4匹が残っている。そして、厄介なことにそれぞれ距離を置くようになった。  奴らは多少は知能があるのか、纏まって行動していると魔法の餌食になるものと理解できたのだろう。 「ひっかき傷程度なら、初級回復魔法で何とかなるだろう」  私はユミの左腕に手を当てて、初級回復魔法を発動させた。  一方で毒タヌキの相手をするのは、ダヴィドとマリーアの役目となったのである。既に2人は、それぞれ槍と魔法で交戦している。 「くそっ……また外したか」  ダヴィドは槍で突こうとするのだが、それを素早くよけられてしまい、またマリーアも魔法攻撃をするが、毒タヌキが動き回るものだから、中々命中をさせることができないでいた。  毒タヌキは攻撃さえ当たれば直ぐに倒すことができる。しかし、素早く動き回るため攻撃が中々当たらないこと、そして何より胃液による攻撃があるものだから、決して下級レベルの魔物ではなく一応は準上級レベルとされているのだ。 「こうなったら! 」  中々攻撃が当たらず埒があかなかったのか、ダヴィドは毒タヌキに目掛けて飛びついたのであった。  すると、ダヴィドの体は思いっきり地面に叩きつけられるかのような勢いで着地した。 「よっし! これで逃げられないだろう」  毒タヌキの一匹が、ダヴィドの体に押しつぶされている。  そしてダヴィドは槍ではなく、サブで装備していたのであろう短剣でその毒タヌキの喉ぼとけを突き刺した。  これで計3匹、すなわち半数の毒タヌキを倒すことに成功した。    そして、私の方もユミの治療を完了したところである。 「ユミの治療も終わった。そろそろ逃げよう! 」  私としては元々、毒タヌキと積極的に戦うつもりは無かったので、そう皆に提案した。  だが……。 「め、眩暈が……うぅ」  と、ダヴィドが言いながら倒れこんでしまったのである。よく見るとダヴィドの服は何かの液体で汚れていた。その汚れは赤色ではないので血液ではないことは確かだ。しかも、少し黄色っぽい。  先程、ダヴィドが自分の体で押しつぶした時に毒タヌキが押しつぶされた衝撃か、或いは元々吐き出すつもりだったのかは知らないが、毒タヌキは胃液を吐いたのだろう。  よって、胃液を吐き出したわけであるからダヴィドが毒にやられた、と考えるのが妥当である。 「とりあえず治療しないと! ユミとマリーアは毒タヌキからの攻撃を警戒してくれ」  私はそう言って、意味があるかは判らないが毒への対策として呼吸を抑え我慢して、ダヴィドの元へと駆け寄る。  他方、ユミとマリーアは臨戦態勢をとっていた。   「おぉぉぉい! 」  と、不意に後方から、掛け声が聞こえて来たのである。 「ん? 」  私は、気になって後ろをみた。  すると、3人の男がこちらへ向かって走って来ていたのである。
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