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第2回「怖い」?「恐い」?
――子供の頃、歯医者に行くのがこわくて仕方なかったんです――
このせりふが新聞記事の中のひとくだりだったとしたら、「こわい」の漢字は「恐い」「怖い」どちらが適切だと思いますか?
「どっちでも良いんじゃない」って?
電子版の新聞を購読されている人は、「恐い」「怖い」両方で検索してみてください。
どちらが多かったですか?
大体の新聞では、「怖い」の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。「恐」の字はというと、「恐ろしい」で検索すればたくさん出てきます。
このほかにも、「凸凹」と「凹凸」、「生け花」と「活け花」、「届出」と「届け出」などなど……。普段目に触れる文や文章の中では「どっちもある」言葉たち。
しかし、新聞づくりの現場では、「こちらは使ってこちらは使わない」といったことが、細かくルール化されています。こうしたルールに基づいた表現は「用字用語」と呼ばれます。(新聞に限らず、言葉を扱う業界では、大体どこもこうした「お約束」が存在します)
新聞を読む上で最も重視されるのは「読み手が、意味を無駄に考えたり誤解したりすることなく、適切に情報を得ることができる表現を使うこと」。新聞、というものは、はっきり言って「芸術作品」ではありません。書き手の思い入れだとか、行間を読むような繊細な表現、衒学的な小難しい表記などは、できる限り避けた方が良いとされています。
漢字・仮名遣いのほかにも、時刻や単位、洋・漢数字の使い分け、カタカナ語の表記、記号の使い分け……。こうしたルールは、新聞各社の合意によって決められたものもあれば、会社ごとに独自に検討・採用したものもあります。
大手の一般紙などは、社内用に策定・編集したルールブックを使っている場合が多いです。そこまでする余力の無いところは、そうした大手一般紙が社外向けに出版している手引を参考に、各社で表記ルールを定めています。
使える漢字は原則、内閣告示で示された「常用漢字表」を基に定められています。子供の頃に国語の授業などで「小学5年生が読めるように作られている」などと聞いた人も多いのではないでしょうか。(私より上の世代には「主婦が読めるように」と教わった人もいるそうです)
ちなみに、私の会社では『朝日新聞の用語の手引』(朝日新聞社用語幹事編、朝日新聞社)を使っています。個人的に参考にしたい、という人向けには『記者ハンドブック』(共同通信社)がお薦めとされていて、実際使用率も高いようです。
※毎日新聞社でも,電子版で一般向けの用字用語集を出版されたようです.2020年9月27日追記※
興味のある人は、購入して読んでみてください。こうした表現のルールが分かると、自分の文章を書く時に「これルビ振った方が良いのかな」「ここって漢字とひらがなどっちが良いんだろう」と迷うことが減るかも知れません。
※この文章は、私の会社の用字用語を基に執筆しています※
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