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ホームへの階段を昇ろうとした時
「おい、落としたぞ」
その声に振り向いたら
呼び止めた声の主の手に、私のパスケースが。
昇りかけた階段を降り
「……すみません、ありがとうございます」
その人が差し出したパスケースを受け取る。
その時、また視界に教師達が見えて
ヤバイって顔をして走り出そうとした私を
その人は手を掴み
広告の貼ってある大きな柱の影に
私と一緒に隠れた。
かすかにタバコの匂い
大人の人の香り。
「新田高の生徒? 」
「……え……」
制服を着てるわけじゃないのに
何で分かったの?
不思議に思ってる間に
柱の向こう側を
教師たちが通り過ぎて行く声が聞こえた。
「ほら、今のうちに行け」
「……はい」
優しい笑顔。
階段をかけ昇り
ちょうど来た電車に乗り込んだ。
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