変身

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朝起きると身体が芋虫になっていた。 姿見と天井を交互に見やるが、間違いない。私は芋虫になってしまった。 昨晩までは確かに人の姿であった。 五本あった指の内、人差し指を使って朝のアラームを設定したのを覚えている。今ではもう手とも呼べない何かになってしまった私の手で。 しかし困った。この体では会社に行く事が出来ない。これまで無遅刻無欠勤であるというのに、どうしたものか。 その時、部屋の戸をノックする音が聞こえた。ゆっくりと開いた戸の向こうから現れたのは、母だった。母は手にスマホを持ち、朝食が出来た事を私に伝えると早々に戸を閉めてしまった。 おかげで私のこの奇妙な姿に気付く事は無かったが、何か物悲しさを覚える。 結局、私は会社に出勤する事にした。 だが、誰も私のイモムシ姿に気付く事は無かった。いや違う、誰も他人の事を見ていないのだ、自分自身すらも。 もしかしたら、自分も芋虫になっているかもしれないというのに。
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