“チックン”

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中には白い服を着た、いつもの先生がいました。でも今日はチックンをするので、少し怖く見えます。 「ア~ン!」先生の顔を見たアンちゃんが、パパに抱っこされながら、泣き始めました。 「あれ~まだ何もしてないよ?」と先生は笑いながら、アンちゃんの顔を触ろうとしますが、アンちゃんは「プイッ」と顔を横に向けてしまいます。 「どっちからやりますか?」と先生がパパに聞いてくるので、 わたちは思わず「アンちゃんから!」と言ってしまいました。 (ごめんねアンちゃん。だって怖いんだもん。) パパは笑いながら、「じゃあアンちゃんからね。」と言って、お膝にアンちゃんを乗せ、先生の前に座りました。 パパがアンちゃんの体を抑えて、病院の人がアンちゃんのお手てを動かないよう抑えました。アンちゃんはさっきからずっと泣いています。 先生がチックンを持って、「はい!じゃあ“チックン”するよ~、すぐ終わるからね~」注射器をアンちゃんのお手てに近づけました。 わたちは泣いているアンちゃんが、すごいかわいそうになって、 「もうそのくらいでいいんじゃない!」と先生に言いました。 パパも先生も笑って、「良くないよ。ちゃんとチックンしなきゃダメなんだよ。」と言って、アンちゃんのお手てにチックンしました。 「ア~~~ン」さらにアンちゃんは大きな声で泣きました。 「は~い。もう終わりだよ~」と先生は言って、チックンしたところにシールを貼って、パパはアンちゃんをお膝から降ろし、頭を撫でながら、病院の人にアンちゃんを渡しました。 「はい。じゃあ次はナツの番だな。」とパパは言って、わたちを抱えてお膝に乗せました。先生の大きなお顔が、わたちに近づいてきます。 (痛いのやだよ~) と思ったわたちは、「先生、痛くしないでね。」とお願いしました。 先生は笑いながら、 「分かったよ、先生上手だから痛くないよ!」とチックンを手に持ちました。 わたちを膝に乗せたパパが体を抑えます、病院の人がわたちの手を抑えました。 (もう僕チックン泣かないよ!) (4歳までは泣いたけど、5歳になったから大丈夫だった) 保育園のお友達が言ってた言葉が、頭の中で聞こえてきました。 (わたちも5歳だから泣かないもん!) と思った瞬間に、お手てに針が刺さりました。 “チックン” (イタイ!)と思ったけど、我慢できました。 お目めに涙はあるけど、なんとか泣かずに頑張れました。 「ナツ偉いなぁ~。泣かないで頑張れたじゃん!」 わたちをお膝に乗せたままのパパは、笑顔で頭を撫でてくれました。 (これでわたちも保育園で泣かなかったって言える!) わたちもパパに向かって笑うと、先生が、 「これでおたふく風邪のワクチンは打ったから、次はインフルエンザね。」と、 パパに向かって言います。 「はい」と返事をしたパパは、また私の体を抑えます。病院の人も今度は、わたちの反対のお手てを抑えます。 「えっ!?えっ!?」わたちが慌てていると、 先生の持っているチックンが、わたちの反対のお手てに刺さりました。 “チックン” お手てに刺さった2回目の“チックン”の痛さに、わたちは我慢できずに「ワ~~~ン」と、さっきの男の子みたいに大きな声で泣いてしまいました・・・ (2回“チックン”するって、パパもママも言ってなかったじゃん・・・)
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