空と大地と泥だらけの君

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ふぅ。 空を見上げる。 一つの雲もない、突き抜けるような晴天。真夏の陽気。麦わら帽子の鍔から見える御天道様は今日も呆れるほどに眩しい。 田畑は山から流れる清水と昨晩降った雨により潤い、光を反射して輝いている。 雑草取りもそろそろ休憩にしよう。 ちらりと我が家を見れば門戸よりポットとお茶うけを持って出てくる人影。どうやらちょうど十時のようだ。 首に巻いたタオルをほどき、清水で手を洗い、彼女に向かい手を振る。 「朝から御苦労様です。 お昼にする?」 「いや今日はもう少し。」 あと一時間もやればこの小さな田んぼのことだ、雑草も取りきれるだろう。 「そう。暑くなってきたから無理しないでね。」 「ああ、そうさせてもらうよ。」 差し出された冷茶を啜り、せんべいを齧り、再び空を見上げる。 小鳥が空を低く飛び回り、虫を追っている。このぶんだと午後は雨か。 当分日照りの心配もなく、一安心。 今日もいい日だ。 お茶がうまい。
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