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ロングヘア
そうして次に、目の前に置かれたウィッグを手に取った。こちらもまた、白が綺麗に入ったロングのウィッグ。
毛先がくるんとしていて愛らしい。
地毛が真っ黒というコンプレックスをかき消すような素敵なウィッグだ。
これは、中学からの親友に頼んだ。
中学、高校と仲の良かった親友。美容の専門学校へ通う彼女に初めて自分の想いを打ち明けたのは、20歳誕生日前日だった。
いつもの談笑の中で、急に。
けど彼女は顔を歪めることも、驚くこともほとんどなかった。
「…っていう、感じ」
「いいじゃん」
「え?」
「何?なんか手伝うことある?」
ニヤッと笑ってみせた彼女がものすごくカッコ良くて、たぶん私は彼女よりカッコよくなれることは一生ないと思った。
「…髪の毛」
「ん?髪の毛?」
「うん、ロングヘアが、良くて」
「なるほどね、ウィッグってことか」
うーんとスマートフォンを片手に片っ端から友達に連絡を取っているようだった。ネットで調べたりもしていたらしい。
ウィッグだけじゃない。メイクも、洋服も、彼女から沢山教わった。
綺麗にメイクを仕上げた自分の顔を見た時、思わず笑みが溢れた。自分で自分を愛おしいと思えたのは初めてだった。
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