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本当に、なんであんな簡単な仕事もできないんだろう、と私はイライラしてしまう。十年以上会っていなかった友人に語るような内容ではないとわかっていたが、亜希子が聞き上手なのでついついブチ撒けてしまった。
今の若い子は、本当に楽な方向にばかり逃げたがる。
一度教えた仕事を、何回も何回も聞き返してくるのも腹立たしいが。やるべき仕事が全然こなせていない状態にも関わらず、平気で定時前から帰る準備をしているのというのは本当に何様のつもりなのだろうと思う。能力がないんだから、その分残業でもなんでもやって取り返すのが当たり前ではないのか。自分だって、早く帰って家事を片付けたいところ、会社のために必死でノルマをこなそうと残業してから帰っているのに。あんないい加減な仕事ぶりで、自分達とさほど変わらない給料を貰っているというのがムカつくといったらない。
しかも、それでいて身を構うことだけは一級品なのだ。なんで会社に、あんな短いスカートで来るのか。綺麗な足を見せつけて男を誘いたいのだとしか思えない。バックも随分値が張りそうなものを見せつけるように持ってくるし、化粧だって妙にばっちりと決めてくる。あの新人女は、髪の毛もそれとなくダークブラウンに染めてることに自分は気づいているのだ。自毛だなんだと言っているが自分は誤魔化されないのである。
――しかも、それで私が注意すると、すぐに泣きそうな顔して他の同僚や先輩を頼るんだから!おかげで私が厳しすぎるとか注意されるなんて、本当に訳がわからないわ。悪いのはどう見てもあっちでしょうに!
おかげで、この一ヶ月だけで5キロも体重が増えてしまった。ただでさえ肥満気味の体型であるというのに、踏んだり蹴ったりである。
「……うんうん、世の中は世知辛いわよね」
そんな私の話をひとしきり聞いた亜希子は、頷きながら携帯電話を取り出した。
「私もムカつくこと多いから、本当によくわかるわ。……というわけで雅恵、コレ試してみない?最高にスカっとするゲームアプリ」
「え、アプリ?……その、私あんまりスマホのゲームとか得意じゃないんだけど……」
「大丈夫大丈夫。機械音痴の私にもできたから!インストールのやり方も教えるし」
彼女は続けた。ストレスをなくすことこそ、美と健康の最大の秘訣だと。
「これ始めてストレス減ったら、マジで私一ヶ月もしないで6キロも痩せちゃったんだから!騙されたと思って、試してみてよ!」
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