かえる、かえる。

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 私はメニューを開くと、ずらずらと並んだ項目をひとしきり確認することにした。どうやら、このターゲットには人間と同じような健康の設定がなされているらしい。長生きさせたいならば、ある程度水や食料を与えて延命させる必要があるようだ。人間、食べ物は一週間ほど食べなくてもなんとかなるらしいが、水がないと三日程度で死んでしまうと聞いたことがある。そのへんは、忘れないようにしなければなるまい。  同時に。小渕瑞穂は、けして大柄な女性ではないのだ。大きな傷をつけてしまうと、すぐに失血死してしまうことになるだろう。ならば、最初は血が出ない系列の拷問から始めてみるべきだろうか。 「そうね、まずは……これ!若い女の子なら、絶対これだけできっついでしょ!」  私はまず、彼女の派手に着飾った服を引っぺがすことにした。私がその項目を選択すると、壁がぱかりと開いてアームのようなものが出現し、暴れる彼女から一枚ずつ服を引き剥がしていく。ブラジャーもパンツもおかまいなしだ。暴れたせいで若干擦り傷を作った上、転んだためにたんこぶを作り、にも関わらず下着まで全て奪われた彼女はわんわんと声を上げて泣き出している。必死で股間と胸を隠そうと頑張っているのが、実に滑稽で仕方ない。 ――じゃあ、次はこれかしらね。……ふふふ、水分補給もできて丁度いいでしょ。私ってば親切ー!  どんどん楽しくなってくる。私はさらにメニューを選択。途端、今度は天井の蓋が開いて、白い部屋にざばざばと水が流れ込み始めた。頭から降ってくる滝のような水流に、彼女は悲鳴をあげながら逃げ惑っている。  恐らく、このままでは溺れると思ったのだろう。全裸の状態で、必死に壁をたたいて助けを求め始めた。どんどん上がっていく水位に、なりふり構っていられないと思ったらしい。 ――残念だけど、私の恨みはこんなもんじゃないわ!そんな簡単に、溺死なんかさせてあげないわよ!  じわじわと水を増やし、一瞬だけ部屋を水でいっぱいにする。彼女が真っ青になって溺れ始めたところで、少しだけ水を抜いて天井との間に空気が残るようにしてやった。慌てたように水面まで泳ぎ、顔を出して息継ぎする彼女。化粧も崩れ、髪の毛は乱れ、実にみっともない有様になっているのが爽快である。  だが、勿論休憩をさせてやりたいわけではない。さらに別のボタンを押した。水はじわじわと減っていき、どうにか彼女の足がつくくらいまでになるが――そのあたりで異変を感じ始めたのだろう。再び瑞穂が、金切り声を上げて暴れ始める。水温と、部屋の気温が上昇し始めたことに気づいたのだろう。 ――そうそうそう!もっと暴れて、泣き叫びなさい!生きたまま茹でられるかもしれないっていう恐怖もなかなかのもんでしょ!  ああ、なんて気持ちがいいのだろう!現実の彼女に影響がないというのが残念だが、そのおかげで犯罪者にならずに済むのだからそれもそれで良し、だ。  じわじわと、彼女が浸っている水が濁っていく。どうやら恐怖で失禁したらしい。ギリギリまで水温と気温を上げたところで、今日は放置してやろうと私は思っていた。汚物まみれの水の中に取り残されるなんて、絶望以外の何物でもないのだから。
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