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 春陽くんを指名した客は観葉植物があって顔が見えなかったが大声で騒いでいる。キャバ嬢か風俗の女の子だろう。ソファーの下からグレーで花柄のミニ丈のワンピースがチラチラ見える。ストッキングは黒でキラキラ光るストーンが付いていた。このダークエンジェルは初回は飲み物込みでワンタイム4000円と安いが次からは20000円くらいの出費を考えなければ来られない。だから女の子の客さんは事務職の安月給の子は少ない。よっぽど家が裕福なら別だが、このご時世に親の金をホストにつぎ込む子は滅多にいない。誠也は1日にその日の昼間に稼いだぶんくらいダークエンジェルに使っている。ドンペリを入れる日なんかその数倍だ。誠也はドンペリを入れるのは2週間に1度くらいにしているが、それでも昼と夜の給料のすべてをホストクラブにつぎ込んでいる。  ここのダークエンジェルは12時までの営業だ。キャバ嬢が仕事が終わってから来るのだから朝までやっていた方が儲かりそうだが、風営法で決まっている。 今日は木曜日だ。明日仕事だが誠也は店が終るまで居て、車を呼んで帰ろうと思っている。  11時になって春陽が誠也の席に戻って来た。 「ヘネシー残しておいたよ、ホラ、新しいボトル入れるから最後を飲んでくれよ」 「あ、俺のために残しておいてくれたのか?」 「ああ、ドンペリも飲みたかったら飲んでいいよ」 「今日はいいよ、ボトル入れる日はドンペリは飲まない方がいい。誠也くんだって、別に飲みてえ訳じゃないんだろ」 「ああ、仕事で嫌というほど飲んでるからな、あ、嫌と言ったらお客さんに失礼か」  誠也は苦笑する。誠也のお客さんたちは金持ちが多くて店に行けば必ずシャンパンタワーをしてくれる。値が張るだけあって確かにドンペリは美味いが本当に味わって飲み、しかも酔いたいときはブランデーの方がいい。胃がじんわり温まる感覚が好きだ。
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