飛鳥と隆臣

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飛鳥と隆臣

 月曜の朝。  大体この日は、いつも騒がしい。  そして、それは今日も例外ではなく、リビングには、朝から耳をつくような華の声が響いていた。 「ちょっと、飛鳥兄ぃ! 私のバレッタ勝手に使わないでよ!」 「えー、別にいいじゃん。料理するのに邪魔だったから、ちょっと借りたよ」  一方、兄の飛鳥は、腰近くまである長い髪を華のバレッタで無造作に束ね、今日もキッチンに立ち朝食の準備をしていた。  双子にとって、兄が料理を作るのは決して珍しいことではない。  神木家は、子供たちが、まだ幼い頃に母を亡くしている。  よって今は、父と三兄妹弟の四人家族。  だからか、父が仕事で不在のときは、大抵、兄が代わりに料理を作っていた。  それに加えて、父が海外に赴任をすることになったのを切欠に、料理はもちろん、家事全般を兄が引き受けることになったのだ。 「それ、私のお気に入りなの!」 「じゃ、そのお気に入りを、その辺に置いとくなよ」 「だからって、勝手に使っていい理由にはならないじゃん!」 「あーもう、うるさいなー」  
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