飛鳥と隆臣

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 キッチンの中で、わちゃわちゃと揉めている飛鳥と華。  その姿を流し見ながら、蓮は一人、トースターの中で、焼き色づきはじめた食パンを眺めていた。 (兄貴、髪伸びたなー)  いつからか髪を伸ばし始めた兄。  もう見慣れた姿だが、髪を束ねエプロンをして朝食を作るその姿は、一見「姉」と見違えてもおかしくないほどで 「なんか、女の子同士がもめてるみたい」 「蓮、お前はまず顔洗って着替えてこい」  ボソリと放った蓮の一言を、どうやら聞き逃さなかったらしい。  フライパン片手に、兄が苛立つような声を発して、蓮はしまったとばかりに眉を顰めた。  兄は"女顔"のわりに、女扱いされるのを嫌がる。  まぁ、実際に男なのだから、それも無理のない話なのだが……  蓮は、その後、腑に落ちない顔をしつつも、「ふぁーい」と返事をすると、あくびをしながらリビングから出ていった。 (まったく……っ)
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