いつでもきみのこと。

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結崎 桜季(ゆうざき おうり)が樋口 海叶(ひぐち かいと)に初めて真剣に気持ちを伝えようとしたのは、明日は高校の入学式、という春休み最後の日のことだった。 幼い頃に事故で家族全員を失くした桜季は、以後は子どものいなかった伯母夫婦のもとに引き取られ、育った。 そこで伯母夫婦とも仲が良かった近所の海叶一家に出会い、共に育ってきた。 所謂幼なじみ、というものである。 育ての親である伯母夫婦は桜季を本当の子どものように大切にし、共に暮らしてきたのだが、桜季が海叶と同じ高校を受験し、合格したタイミングで伯父の海外赴任が決まった。 桜季も同行するかどうかの話になったときに、海叶と離ればなれになることなど微塵も考えられなかった桜季は一人日本に残ることを選んだ。 海叶への想いが、ただの友達への想いなどではないと気付いていたのはもうずっとずっと前のこと。 もしかしたら、初めて会った幼い時から、すでに彼に惹かれていたのかもしれないとすら思う。 常に傍にいて、片時も離れずに大きくなった。
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