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「どう考えてもあんたがお兄ちゃんやなくて、私がお姉ちゃんの方やろ?どう見たって、私の方がしっかりしてるやん!たぶん」
「お姉ちゃん…」
「そうや。妹キャラやないし、私。どちらかと言うと、大人なお姉ちゃんキャラやしな」
岡崎櫂は、プッと吹き出すと、「それでええよ」と頷いた。
時乃はバイクのアクセルを回す。
ゆっくりと走らせ、庭から出た。
「じゃーね、岡崎君」
「櫂でええよ」
不覚にも固まってしまうと、岡崎櫂は玄関先に戻って、楽しそうにヒラヒラと手を振った。
「時乃、気を付けて帰りや」
「こっちは時乃って呼んでええって言ってないけど!?」
聞こえているはずなのに、彼は聞こえていないふりをして、無邪気に手を振る。
時乃は嘆息すると、軽く手を上げてからバイクを走らせた。
坂を下りながら、ちらりとサイドミラーを確認する。
時乃がカーブを曲がるまで、岡崎櫂の姿がミラーの端に映っていた。
「変な奴」
ポツリと呟く。
再び車体と体をバウンドさせながら、時乃は長い長い坂を、下って行ったのだった。
◇ ◇ ◇
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