15人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「あそこにな、うちの親父がいるんや」
「……え」
「ちょっと顔見て?岡崎さんに似てるような気がせぇへん?」
真面目に言う岡崎櫂に、時乃は一瞬固まってから、とりあえず目を凝らしてみた。
梅の花の先に、帽子を深く被って剪定に励んでいるおじさんが見える。
木の枝を見上げているせいか、顔はよく見えなかった。
ハッと正気になって、キッと岡崎櫂を見上げる。
「ちょっと待って、まさか持ち出されへん証拠って、親父さんの事だったん?確かに持ち出されへんけども!しかもソックリだったらまだしも、似てるような気がするって、なんやねん!?」
憤慨する時乃に、岡崎櫂は肩を押した。
「ええから、ちょっと近付いて見て来て。何か感じるかもしれへんし。シンパシー的なものとか」
「いや感じへんよ!知らんおじさんの顔見てもなにも感じへんよ!てかシンパシーってなに!?共鳴したくないんやけど!」
「まぁまぁ、少しだけ」
「帰る!もう帰ります!約束通り、金輪際私に関わらんといて下さい!」
急いで山を降りようとすると、岡崎櫂は慌てて時乃の肩を掴んだ。
「待って待って、半分冗談やから」
「半分は本気なん!?」
岡崎櫂は困ったように笑うと、今度こそ真剣な面持ちで言った。
「家へ行こう。証拠はそこにあるから」
最初のコメントを投稿しよう!