第一話

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「あそこにな、うちの親父がいるんや」 「……え」 「ちょっと顔見て?岡崎さんに似てるような気がせぇへん?」 真面目に言う岡崎櫂に、時乃は一瞬固まってから、とりあえず目を凝らしてみた。 梅の花の先に、帽子を深く被って剪定に励んでいるおじさんが見える。 木の枝を見上げているせいか、顔はよく見えなかった。 ハッと正気になって、キッと岡崎櫂を見上げる。 「ちょっと待って、まさか持ち出されへん証拠って、親父さんの事だったん?確かに持ち出されへんけども!しかもソックリだったらまだしも、似てるような気がするって、なんやねん!?」 憤慨する時乃に、岡崎櫂は肩を押した。 「ええから、ちょっと近付いて見て来て。何か感じるかもしれへんし。シンパシー的なものとか」 「いや感じへんよ!知らんおじさんの顔見てもなにも感じへんよ!てかシンパシーってなに!?共鳴したくないんやけど!」 「まぁまぁ、少しだけ」 「帰る!もう帰ります!約束通り、金輪際私に関わらんといて下さい!」 急いで山を降りようとすると、岡崎櫂は慌てて時乃の肩を掴んだ。 「待って待って、半分冗談やから」 「半分は本気なん!?」 岡崎櫂は困ったように笑うと、今度こそ真剣な面持ちで言った。 「家へ行こう。証拠はそこにあるから」
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