再会

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「久しぶり。誕生日、間に合わなくてごめん。」 創太に言われて、未来は既に泣きそうだった。 謝らなければいけないのは自分だ。 最後の手紙に、謝罪の言葉は書かなかった。 謝って終わるような関係ではないと、思ったからだ。 でも、それは身勝手な言い分だったと、今は思う。 「謝らないといけないのは私の方。突然、出て行ってごめんなさい。」 「創太、痩せたね。」 すると創太は、力なく笑った。 そんな二人の間に、さっそく青島が割り込んできた。 「そうだな。道田は痩せすぎだな。まともな食事 してないんじゃないか。うまいもの食べて元気を 出せ。」 青島に言われて、創太は返事をすると箸を取った。 「お前もだ、中西。ここの料理は、ただおいしいだけじゃない。」 青島の気持ちは、さすがに伝わる。 未来は箸を取ろうとして、手が僅かに震えるのが わかった。 目を閉じてから、軽く深呼吸して、観念するかのように食べ始めた。 「おいしい…」 自然にそう口にしていた。 その様子に、青島は満足そうに頷いた。 「本当に、おいしい。」 創太も続けて言った。 ふたりは顔を見合わせて笑った。 丁寧に調理され、美しく盛り付けられた料理は、それだけで2人の緊張を和らげてくれた。 「今夜のコースは特別だ。いつもより少ない。」 デザートが出てきたところで、唐突に青島が言った。 「別にケチってる訳じゃないぞ。邪魔者はそろそろ消える。あとは二人で話せ。」 「そんな、邪魔者だなんて。」 と未来は言った。 「中西、フリーになったのは、将来を考えてのことだろう。仕事のことは、まあいい。でも道田とのことは、二人できちんと話せ。」 青島の言葉に、未来は唇を噛んだ。 「ここは22時までいてもらって構わない。酒でも 何でも好きなものを注文しろ。今後の仕事で返して くれたら安いもんだ。ただし俺が世話を焼くのは、 今日が最後だからな。」 そう言うと、青島は立ち上がった。 未来と創太も、慌てて席を立つ。 青島は笑って、それを制するように、軽く手を挙げた。 「社長、ありがとうございます。仕事の件は、また ご連絡します。」 未来はそう言って、頭を下げた。 「外まで送ります。未来はそのまま待ってて。」 創太はそう言うと、青島と一緒に部屋を出て行ってしまった。
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