大きなすずめの木

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おおきなすずめの木 ある日、青年は道ばたでたおれている 小さな小さなすずめを見あつけました。 青年はその小さなすずめをやさしくすくいあげると、 家に帰ってすぐ手当てをしました。 そのかいあって、すずめは元気になり、 飛べるようにもなりました。 青年は、空へとび立つすずめを見送ります。 「気をつけるんだよー!」 小さなすずめが小さくなるまで、見送りました。 ところが、それいこう、すずめは毎日青年のところへ あそびにくるようになったのです。 すずめは小さなからだのおかげで、 兄弟たちからいじめられていました。 あの日も、 「おまえ、こんなに早くとべないだろ?」 と、ばかにされたので、 いきおいよく兄弟たちの真似をしたら、 電柱にぶつかってしまいました。 そこへ、青年がやってきたのです。 すずめははじめてだれかにやさしくされたものですから、 青年になついてしまいました。 「きょうも遊びにきたのかい?」 ちゅんちゅんちゅん と鳴いて、返事をしているようでした。 「仲間のもとへおかえり」 そう言いながらも、 青年は会いに来てくれるすずめをうれしく思っていました。 あるとき。 すずめがどこからともなくやってきてまどにおり立つと、 中のようすをのぞきます。 たくさんの絵がかざられてた部屋に、さまざまな画材… いつものいすにすわって絵を描いている青年のすがたはありません。 でも、家の中に動くかげがあります。 すずめがふしぎに思って、もっとまどに近づいたとき… ばん! なにかがまどのガラスに体当りしてきました。 それはどうぶつのようで、いじわるそうな顔をしたねこでした。 ねこは、青年が大切に飼っているペットでした。 自分だけにかまってほしい猫は、 すずめにやきもちをやいていたのです。 青年をひとりじめしたい猫は、 おどろかせたらもう寄って来ないだろうと考えました。 すずめは小さく話しかけました。 どうしてこんなことするの? ねこが正直に答えます。 ご主人さまをとられるのがいやだからね でも、ぼくは、あなたのように家にいれてもらえません あなたのようにはなれないよ そういうことじゃない わかるんだ おまえを見ているあの人がどんな気持ちなのかを… そのときです。 すずめはなにかに気が付きました。 さっきのしょうどうで、 たなから物が落ちそうになっているのが見えます。 それも、ねこの真上から! ねこさん! あぶない! がしゃん! 大きなびんがわれて、あたり一面にガラスのはへんがとびちりました。 ねこは、 すずめの呼びかけに反応してすぐによけれたので無事でした。 おまえ、おれを助けてくれたのか 当たり前です だれだってあぶないところは助けます あんなことをしたってのに… 猫は小さな声で、少しくやしがって、つぶやくように言いました。 さっきはすまねぇ ありがとよ そうして、器用にはへんをさけながら、 おくに引っ込んでしまいました。 ふしぎなねこさんだなぁ と思いながら、 青年が帰ってくるまで庭の木にとまってひなたぼっこをしていました。 青年は、 すずめをペットとして飼うことはできないことを知っていたので、 あいさつを交わす以外なにもしませんでした。 すずめもすずめらしく、 木にとまってちゅんちゅんちゅんと鳴くだけでした。 小さなすずめはいつまで経っても、小さなすずめのままでした。 成長することもなく、からだは幼いまま時が過ぎていきました。 あるとき。 すずめがこれから青年の元へ行こうと飛んでいるとき、 大きなからすに出くわしました。 すずめに対してとても大きな姿のからすが、 小さなすずめを見て笑います。 おまえかぁ 仲間に見捨てられた変な子ってのは いやらしくずっとつきまとってきます。 人間しかかまってもらうやつがいないんだろ かわいそうに ぼくはそれでもいいんだ! すずめがいっしょうけんめい羽ばたいてその場をはなれようとしても、 ひとっ飛びでからすはついてきます。 木の枝をかいくぐって、きずだらけになりながらも、 にげつづけました。 おまえ、そろそろじゃまものだって気づけよ! 黒い物体がすずめのからだをどん!と押しました。 なりふりかまわず直進をしていたすずめにとって、 スピードをおさえられないまま青年の家に体当たりしてしまいました。 からすは笑って、飛び去っていきます。 音を聞きつけて、青年がやってくると きずだらけの小さなすずめが横たわっていました。 それは出会ったときよりもひどいものでした。 「どうしたんだい!?」 ねこもあわててとび出してきます。 心配そうにのぞきこむねこの顔が、見えました。 ねこさん… ほかのすずめは人間と猫が怖くて近づかないらしいけど… ぼくは、あなたたちが大好きでした すずめは、笑顔のまま、息をひきとりました。 青年は草原の真ん中にすずめを埋めました。 いつも一匹でやってくるすずめに、 たくさんの動物の友達ができればいいと思い、 この場所をえらびました。 それから、何年も過ぎました。 なんと、すずめの埋めた草原の真ん中に、 大きな大きな木が育ちました。 羽休めで木にとまった何匹もの鳥たちを 守るように葉がおおい、 そよそよと揺られています。 それを、いつかの青年がふでをにぎって絵を描いています。 そのキャンパスにおさまりきらない、大きな木を…
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