10人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
4
「由加おめでとー! 頑張ったねぇ。ホントよかった!」
「ありがとう!」
タピオカで乾杯だ。
美由紀がスマホのページをスクロールする。
「ここならホワイトそうで安心ね」
「うん。親会社がサイバーだし、百パーセント子会社だから、就業規則なんかもほぼ同じなんだって」会社説明を暗記するほど読み込んでいた。
「美由紀は赤坂見附だっけ?」
「そう、見附」
「だったら渋谷でご飯できるね、銀座線一本だよね」
「ねー。そしたらペッパーカフェ付き合って。なんか、一人じゃ行けなくて」
「うんうん付き合う。あ、見附の美味しいとこも一緒にいこ!」
「ねー、楽しみー。ほんと一安心だね。あとは卒業するのみ!」
「うん。がんばってよかったよ」
思い出したように美由紀。
「そーいえばさ、大輔くんも就活だよね? どーしてるの?」
「あー……こないだもLINEで聴いたんだけど、なんか、迷ってるみたいだった」
「そうなの? この時期に迷ってるようじゃ心配だね……なんかアドバイスしてみたら? 友達なんだし」
「えー? 友達っていうか、ただの腐れ縁だし」
「でも、由加が応援してくれたら喜ぶんじゃない? あんたのこと好きなんでしょ?」
「うーん……まぁ、告ってくれてるけど……わたしは別に……」
「会ったことないけど、由加の話聞いてると、悪い子じゃないと思うけどな」
「チャラいんだよ。告ってんのもなんか、ノリだけって感じだし」
「由加はやっぱり、菅野先輩か。まだ好きなら連絡してみたら? 内定祝いしてって」
「えー? そんな厚かましいこと出来っこないよ、ムリムリ!」
「そーかなぁ? 大学は違えど可愛い後輩なわけだし、いい口実と思うけど」
結局結論は保留のまま、次はお酒で祝杯をあげる約束をして、この日は解散した。
その夜由加は、すでに内定済みの数人の友達にLINEで報告した。グループLINEには、まだ就活中の子もいるので遠慮した。
気が抜けてぼおっとしているうちに、深夜一時を過ぎている。
この日は大輔からのLINEはなかった。
せっかく自慢してやろうと思ったのにと、由加はすこし物足りなかった。
ベッドに入り部屋の電気を暗くしてからも、大輔からのLINEが気になって、この日はなかなか寝付けなかった。
最初のコメントを投稿しよう!