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「由加おめでとー! 頑張ったねぇ。ホントよかった!」 「ありがとう!」 タピオカで乾杯だ。  美由紀がスマホのページをスクロールする。 「ここならホワイトそうで安心ね」 「うん。親会社がサイバーだし、百パーセント子会社だから、就業規則なんかもほぼ同じなんだって」会社説明を暗記するほど読み込んでいた。 「美由紀は赤坂見附だっけ?」 「そう、見附」 「だったら渋谷でご飯できるね、銀座線一本だよね」 「ねー。そしたらペッパーカフェ付き合って。なんか、一人じゃ行けなくて」 「うんうん付き合う。あ、見附の美味しいとこも一緒にいこ!」 「ねー、楽しみー。ほんと(ひと)安心だね。あとは卒業するのみ!」 「うん。がんばってよかったよ」  思い出したように美由紀。 「そーいえばさ、大輔くんも就活だよね? どーしてるの?」 「あー……こないだもLINEで聴いたんだけど、なんか、迷ってるみたいだった」 「そうなの? この時期に迷ってるようじゃ心配だね……なんかアドバイスしてみたら? 友達なんだし」 「えー? 友達っていうか、ただの腐れ縁だし」 「でも、由加が応援してくれたら喜ぶんじゃない? あんたのこと好きなんでしょ?」 「うーん……まぁ、告ってくれてるけど……わたしは別に……」 「会ったことないけど、由加の話聞いてると、悪い子じゃないと思うけどな」 「チャラいんだよ。告ってんのもなんか、ノリだけって感じだし」 「由加はやっぱり、菅野先輩か。まだ好きなら連絡してみたら? 内定祝いしてって」 「えー? そんな厚かましいこと出来っこないよ、ムリムリ!」 「そーかなぁ? 大学は違えど可愛い後輩なわけだし、いい口実と思うけど」  結局結論は保留のまま、次はお酒で祝杯をあげる約束をして、この日は解散した。  その夜由加は、すでに内定済みの数人の友達にLINEで報告した。グループLINEには、まだ就活中の子もいるので遠慮した。  気が抜けてぼおっとしているうちに、深夜一時を過ぎている。 この日は大輔からのLINEはなかった。  せっかく自慢してやろうと思ったのにと、由加はすこし物足りなかった。  ベッドに入り部屋の電気を暗くしてからも、大輔からのLINEが気になって、この日はなかなか寝付けなかった。
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