第2章 大人の事情

6/11

304人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
「別に喧嘩に強くなれ、とは言わない。雪子ちゃんは自分の身くらいは、自分で守れる人になって欲しいのよ!」 「それと喧嘩は関係ないでしょっ」 「私は旦那に喧嘩教わったわよ。鍛えられたんだから!」 「なんの自慢なの?!」 私は逃げたくて部屋を出ようとしても、おばちゃんは私の肩と腕を掴んで、そこに押し倒した。 「い、いたぁい!おばちゃん!」 「構えなさい!真波も次郎も、今は抜け殻みたいになってるけど、あんたが強くなって、あの二人を支えなさい!私を倒すことができたら、全部教えてあげるから。あの二人が抱えてることも、私が、抱えてることも…!」 おばちゃんの目に、涙が浮かんでいた。 私はそんなおばちゃんを見て胸がチクリと痛み、 「知らなくていい。知りたくない!」 と叫んで蹲ると、おばちゃんは私の腕を掴んで立ち上がらせると、顔を近づけてきて、 「どうかあの二人を、憎まないでやって!」 と言って私を抱きしめた。 おばあちゃんの身体は、かすかに震えていた。 「憎まないで…。」 その理由は、子供の私にはやっぱり難しい。 そのことを理解したのは、中学に上がってからだった。 中学に上がる頃には、私は喧嘩は強くなった。 もちろん、不良みたいに喧嘩をすることもないし、表立っては強いところなんか見せない。でも、私を陥れようとする女が詰め寄ってくると、私は至近距離で詰め寄って、拳を振り上げて殴りかかる。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

304人が本棚に入れています
本棚に追加