第2章 大人の事情

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お母さんはそこで初めて、婚約者である亜樹さんではなく、お父さんのことが好きだとはっきりとみんなに言ったんだ。 お父さんも嬉しそうに笑って、ようやくそこで二人は両想いとなった。お父さんとお母さんは手を取り合ってパーティーを抜け出した。 亜樹さんは、そんな二人を見て自分の中でも決心がついて、跡取りの資格を辞退。その場で範子おばちゃんのことを好きだと発表して、ダブルカップルが誕生した。 そうして、亜樹さんは家を勘当された。 亜樹さんは、範子おばちゃんとすぐに結婚した。式や披露宴もないけれど、二人は幸せそうに寄り添って、小料理店を始めた。それが、『すみれ』だ。『すみれ』は、範子おばちゃんの雰囲気で、亜樹さんがそう決めたらしい。 お母さんは勘当はされなかったけど、実家とは暫く疎遠になり、お母さんは実家に行くことはなかった。お父さん側の家族は祝福してくれて、結婚に向けて交際を始めたんだ。 範子おばちゃんはすぐに妊娠。それからお母さんとお父さんも入籍した。 亜樹さんと範子おばちゃんの間に生まれたのが、滋。滋が生まれた一年後に、私が産まれた。 2組のこの家族は、いつも一緒にいたという。どこかに旅行するのも、お母さんとお父さんと私。亜樹さんと範子おばちゃんと滋で。初詣や、夏祭りも、家族のようにいつも一緒にいたんだ。
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