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亜樹さんのことで苦しんでいたけど、そのことをお父さんに泣きついたことはなかった、という。その悲しみを吐き出すには、時間が必要だったんだ。
私と滋はその真実を知ってから、私の部屋でお互いの涙を隠すように肩を抱き合って泣いていた。
滋は、そのことで誰かを恨むことはないし、そういう人ではない。お母さんを責めることもしない。だけど、それでも泣けてしまうのは、やっぱり、寂しいんだと思う。
私にできるのは、抱きしめてあげることだけ。震える心を曝け出して、泣ける場所が私だけなら、私の胸で泣いていいんだよ。私たちは、家族みたいなものだから。永遠に、それは変わらない。
私はそんな滋を、ギュッと抱きしめてあげた。
お互いの涙が、乾くまで。
大人の事情。
私は、その時はまだお母さんの孤独を分かっているようで、ちゃんと理解できていなかった。誰かを失う痛みを、まだ、私は知らない。
仕方ない、なんて言葉で片付けられないことも、理屈では分かる。
でも、誰のせいでもなかったはず。
お母さんは自責の念で、私を育てられなかったんだ。お父さんはそんなお母さんを守りたくて、いつもそばにいてあげたんだよね。二人とも十分苦しんだ…。
でもね。
小さい頃の私には、そんなことわかるはずもなかったんだよ。
今更それを責めることは出来ないけど。
でも、私は本当は…寂しかったんだ。
手を差し伸べた時に、抱きしめて欲しかったの。
愛されていないと思って、…ずっとそう思ってきたんだから。
愛されたかった。
私は、ずっと、愛されたかったんだよ。
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