第3章 無邪気な笑顔

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* 中学2年の夏。 滋は受験を控えていたけど、いつも夜ご飯を食べにうちに来る。私のお父さんとお母さんは相変わらず帰りが遅くて、私は部屋で一人でテスト勉強していた。すると滋が勝手に二階に上がってきて部屋に入ってくると、 「よう。雪子。ハラ減った。なんかない?」 と言ってくると、私は振り向いて滋を見つめた。 「えぇ?ちょっと、勝手に入ってこないでよ。てか、すみれで食べればいいのに」 「おふくろ、店忙しくてさ。なんか食わせろって言ったらタワシを投げつけてきたんだけど」 「タワシ?!おばちゃんらしいわ」 私は壁時計を見ると、時計は夜の9時を回っている。 「今からご飯炊くのは、なぁ…。じゃ、麺類でいい?」 と言って立ち上がると、滋はウンウンと頷いた。 「やった!」 「滋、受験じゃないの?」 滋が先に階段を降りて行き、私もその後ろを歩いて階段を降りると、スリッパを履かなかったから、靴下で足が滑って、 「あ!あぶなっ……っ」 と叫ぶと、滋はすぐに振り向いて、 「え?ゆき……っ!わっ?!」 と私を抱きとめようとするけど、勢い余って一緒に階段下に転がり落ちてしまった。滋が下で、私が滋の体の上に乗って、 「いたたた…っ」 と言って頭を押さえると、滋も眉根を寄せて、 「俺も、痛いっ」 と言われて、私はハッとして滋の体から離れようとすると、滋は私の腕を掴んで引き寄せた。
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