第1章 奇跡は思い出の中に…

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私が保育園などにも通っていないくらい、小さかった頃。 私は両親と過ごす時間が楽しくて、無邪気に甘えて母と父の腕の中でいつも笑っていた。 お母さんの笑った顔は子供から見てもとても綺麗で、子供ながらにそんなお母さんの笑顔に見惚れていたっけ。お父さんは普段は冷たい顔なのに、私の前でだけは目尻を下げて、軽々しく抱き上げてギュッと抱きしめてくれた。 大好きなお父さん、お母さん。 冷凍庫にはいつも少し高級そうなアイスクリームが入っていて、よく家で一緒にアイスクリームを食べていたっけ。 小さかった頃は、お母さんは私をあちこちパーティーに連れていってくれた。でもお母さんは忙しそうで、いろんな人に挨拶しなくちゃいけなくて、私が一緒にいたことをすぐに忘れて動き回ってしまう。 お父さんは内向的なタイプだから、パーティーは苦手。たまに休みに引っ張り出されても、うんざりして、見るからにイヤそうな顔をする。 仲良しなのに、そういうところは、合わないみたいだ。 六本木のとある大きな商業施設のビルで、今日も盛大なパーティーが行われている。 お母さんとお父さんが他の人と話しに夢中になっていると、私は喉が渇いてあちこち歩き回り、気がつくとパーティー会場を出てしまってい。もちろん、そんなこと幼い私も両親も知らない。 「つかれたよぉ。のどかわいたよぉ」 私は疲れて、泣きたくなった。 お母さんは前ほど一緒に遊んでくれなくなった。 寂しい…。 そんな気持ちが、芽生え始めていた頃だった。
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