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「な、なに?!滋っ」
「雪子。…俺ら、付き合ってみる?」
「え?!」
滋はそう言って私の腰に腕を回して抱きしめると、私はドキッとして滋の瞳を見つめた。滋は首を伸ばして唇を近づけてくると、私は思わず滋の腕を振り払って離れると、
「ば、馬鹿なことはやめて!からかわないでよ!」
と言って急いで立ち上がると、キッチンに駆け込んだ。滋はブツブツ何か言いながらリビングに来て、テーブルの椅子を引いて座ると、
「付き合うくらい、今更、いいと思うけど。お前、俺のこと、嫌い?」
パスタを取り出して、私は鍋に水をたっぷり入れて沸かすと、沸騰するまで時間があって、チラッと滋を見た.
「じゃ、聞くけど…滋は私のことが、好きなの?」
「え?」
「私は…八方美人な滋のことは好きじゃない。優しいよ。優しいことはいいことだと思うわ。でも、みんなに優しいって、みんなも勘違いするよね。私はそういうの、嫌だわ。私だけに優しくしてくれるのがいい。ぶっきらぼうでもいいの。その優しさは私だけに向けられてるって感じるような恋がいい」
私はそう言って、沸騰してきた鍋の中に塩を軽くひとつまみ入れて、パスタを両手で持って鍋の中心でパッと離した。
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