第3章 無邪気な笑顔

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* 約束通り。 私は滋と同じ高校に行くことにした。 結構頭がいい高校だった。偏差値が標準よりも高めなので、必死に勉強して、滋にも勉強を見てもらったりもした。顔が良くて頭がいいって、ほんと、嫌味だわ。それでもなんとか頑張って受験して、ようやく私は高校生になった。 女友達が出来るだろうか。 でも、私は話すことが下手だし、人の顔色を伺ってしまう癖がある。とりあえず、滋にはあまり教室に来ないでほしいとお願いしている。高校でもやっぱりモテてるみたいだから、巻き込まれるのは回避したい。 私は、教室で一人でいつも小説を読んでいた。私の隣にクラスメイトの男子が座ると、 「渡部さん。彼氏、いる?」 「可愛いよね。彼氏いないならさ、どう?俺たちのうち、誰が一番タイプ?」 三人くらいの男子が言うと、私は三人の顔を端から見回して、 「…ごめんね」 と小さく呟いた。男たちは休み時間ごとに入れ替わり立ち替わり。ほんとにうざい。 放課後にも、男子はやってくる。 「帰り、ファーストフード寄ろうよ。ね?カラオケとかもどう?」 「行かない」 「なんで?」 「行きません」 私が困ってると、後ろから誰かが私の腕を掴んできて、 「渡部さんは、私と帰る約束してるのよ」 と言って腕を掴んで教室を出ると、私は彼女の顔を後ろから覗き込んでみた。 同じクラスの梶原萌梨(かじわらもり)だ。話したことはない。挨拶程度。優しそうで、明るいけど、特定の友人しか作らなそう。真っ直ぐな眼差し。笑うと少しエクボが出る。
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