第4章 人気者の恋愛事情?

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そうして、滋は次の日に初めて教室に遊びに来た。でも、私と梶原さんには近づかず、なぜかほかの男子や女子に話しかけられて、窓際の奥の私の机までたどり着けない。梶原さんも全然気づいていない。前途多難だなぁ。 それから何度も滋が来るのに、全然近づかないから、私も梶原さんに「私の友達よ」と紹介することも、まだできない。 面白い。あの滋が、恥じらってる。梶原さんを前にすると、こんな臆病な男になるんだ。 私はニヤニヤして滋を横目で見ていると、私の前に座っている梶原さんは私の顔を覗き込んで、 「ね?渡部さん。…あれ?渡部さん?」 と言って顔を覗き込んでくると、私は我に返って梶原さんを見て、 「え?あ、なに?ごめんなさい。聞いてなかった」 と微笑んで言うと、梶原さんは吹き出して笑った。 「ヤァね。なに考えてたの?あのね。祐が…兄はね…彼女、いるみたいなの。私は…なんか…。でも、兄にとって私はただの妹よね。ほら、こういうの、よくあるでしょ?ドラマとかでも。義理の兄と妹。一緒にいれば情も移って…ってやつ。それだよね。恋じゃ、ないのよね…」 梶原さんはそう言って、頬杖をついて目を閉じて微笑んでいた。そんな梶原さんが、とても可愛かった。守ってあげたくなる。でもこの会話は、きっと教室の後ろにいて女の子に囲まれてる滋にも、聞こえてるはず。どう思ったのかな…。 ちょっと、切ない。
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