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滋が私の向かいのソファに座って、腕を組んで目を閉じている。
私はため息をついてジュースを飲みながら、そんな滋を黙って見つめていると、
「気のない女の子には、どんな軽口も言えるんだけど、なぜかあの梶原さんの前に行くとね、話が浮かばないんだよねぇ」
と染み染みと語り始めた。私は目を逸らしたまま、ジュースを飲み干してグラスを前のテーブルに置いた。
「付き合ったこと、あるよね?」
「ある」
「いろんな経験、あるって言ってたよね」
「あるある」
「むしろ、その自信が妨げになってるんじゃないの?」
私が言うと、滋は目を丸くした。
「そんなぁ。どうやって話しかけよう?」
「知りません」
「でも、…好きな人、いるんだよね?」
やっぱりきこえてたか…。
「そう、だねぇ」
「相手は?お前、知ってる?」
滋がずっと質問攻めだ。私はうんざりしてきて、
「知らない。あ、でも、二つ上って言ってたかな」
「チッ。俺より上かよ」
「年、関係なくない?」
「いやいや。重要だぞ」
「ふぅん」
私には全く持って、興味がない。滋も疲れてきたのか、あぐらをかいて、肩を叩いている。
「それよか。お前。俺ら2年の間でも人気だぞ。良さそうな人がいたら会わせてやるけど」
「結構です」
「即答!ほんと、お前はいつか、どんなやつとか恋愛するんだろ。恋愛すると、どういう女になるんだろうな」
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