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その翌日。
滋が梶原さんに話しかけられないまま、梶原さんの身に異変が起こっていた。
梶原さんの母親が事故で突然亡くなったと知らせを聞いたのは、挙動不審だった日の翌日だった。
梅雨が来る前の、春の終わり。
夏の予感。
そんなある日の、突然のことだった。
担任から聞いて、お通夜に行くと聞いたから私も連れて行ってもらうことにした。担任は榊原さゆり先生。二十代半ばのさゆり先生は、優しくてしっかり者。クラスのみんなに好かれている先生だ。
「会社帰り、カーブを曲がりきれなかったみたいでね。残念ね。でも、再婚して義理のお父さんがいてくれるから、まだ救われてると思うわ。でもまさか、短期間でお父さんもお母さんも亡くしちゃうなんて」
さゆり先生はそう言って、悲しそうにハンカチで涙を拭っていた。
私は制服で、さゆり先生は喪服に着替えて、葬儀場に向かった。そこにはたくさんの人たちが集まっていた。順番にお線香をあげていくと、前方の施主席に梶原さんの家族が座っていて、私は梶原さんに歩み寄った。かけてあげる言葉は見つからないけど、
「梶原さん」
とひとこと話しかけると、梶原さんは顔を上げて私を見るなり、涙が溢れてきて、
「きてくれて…ありがとね」
と呟くように言って、俯いて泣き出した。すると、梶原さんの前に座る少し年上に見える制服姿の男子が、振り向いてそんな梶原さんの肩に手を置いた。
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