第5章 天使が堕ちた日

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彼は悲しそうに、梶原さんの肩を抱き寄せて目を伏せている。そして、梶原さんを気遣ってあげてるのがよく分かった。 この人がきっと、梶原さんが話してた人だね。義理のお兄さん。梶原さんが大好きな人。優しそうな人で、梶原さんを守るようにそばにいてくれている。きっと、この人も梶原さんのことを…。 そして、梶原さんの真横には幼い女の子がいた。小学一年生って聞いていたと思う。子供のわりに綺麗な整った顔立ちをしている。そして梶原さんの義兄の隣にも少年が座っていた。あどけなさも残る、小学6年生か中1くらいかな。 私と先生は施主席から離れて会場を後にすると、そこで二人組の男性とすれ違った。目が合ったわけではないけど、私は少し振り向いた。 あれ?どっかで見たことがあるような。…ないような。 黒い上下のスーツ…一人は若く、もう一人は彼よりだいぶ年上に見える。キリッと目元をつりあげて、怒っているような表情だった。 あ、いつも学校の近くに車を止めて、中に乗っていた男の人たち…かな。タバコを吸っていたあの人は、いつも眠そうな、やる気なさそうな顔だったけど、ここで見た彼は、怖かった。明らかに、何かに腹を立てているような…。いや、まさかね。別人かもしれないし。 でも、私にはそんなこと、わかるわけもない。 私はまた正面を向いて、ゆっくりと帰っていった。
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