第1章 奇跡は思い出の中に…

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「のどー。かわいたのー。あのね。イチゴミルク」 「は?」 お兄さんは立ち上がって自販機を見たけど、もちろんイチゴミルクなんてあるわけない。 「ここにはないな」 「えぇ?つかえないのね」 なんで、イチゴミルク置いてないのかな!今すぐ飲みたいのに。今すぐ飲みたいのに! 私はムカッとして思わず唇を尖らせると、俯いてキュッと唇を噛みスカートの裾を握りしめて、 「おうち、かえりたい」 と呟いた。家に帰ればイチゴミルクあるし。早く帰って、イチゴミルク飲んで絵本でも読みたい。 「まぁ、つまんねぇよな。こんなとこにいても。お前のパパとママはどこにいんの?」 「あのね。パーティー」 私はふてくされながら、パーティー会場を指さした。 「ああ。それでほっとかれてんのか。つまんねぇよなぁ」 「イチゴミルク」 「ないってば」 「ぶーーっ」 じゃ、そこにはなにがあるんだろ。牛乳?オレンジジュース?もうなんでもいいよ。飲めるなら。 「甘いのは、ココアなら、あるぞ」 「ここあ…?あまいの?」 「のんだことねぇの?」 「ない!…と、おもう。おいしいの?おにいちゃん、ここあ、のんだことあるの?どこで?なんで??」 私はお兄さんの足にしがみついて言うと、お兄さんは私をフワリと両手で抱き上げてくれて、 「おいしいぞ。夏は冷たいのもうまいし、冬はあったかーいココア、うまいんだ。甘いけどな。どこで飲んだかは覚えてないけど。飲んでみる?この俺がご馳走してあげよう!」 とお兄さんは微笑んで言った。
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