第1章 奇跡は思い出の中に…

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私はそんなお兄さんの笑顔が何だか凄く嬉しくて、お兄さんの頬に頬擦りして、 「のむー!!おにいちゃん、いいひとねー」 と言って甘えた。お父さんにするのと同じ頬擦りだ。お兄さんは小銭を自販機に入れて、私を抱き上げて右手をココアのボタンの場所に持っていって、 「ポチッて押して」 と言うと、私はキュンと胸が高鳴った。 「ポチッ!!」 と無邪気に言ってボタンを押すと、ガタガタッと音がして、取り出し口に缶が転がり落ちた音が響いた。お兄さんは私をベンチに座らせてくれると、自販機の取り出し口から缶を取りあげると、缶のタブを開けて、 「両手でしっかり持って、飲むんだぞ」 と言って私の前に差し出した。私は頷いて両手で冷たい缶を握り、ココアというものをズルズルと、恐る恐る、一口飲んだ。お兄さんは隣で足を組んで座り、 「どうだ?」 と微笑んで聞くと、私はそのままゴクッゴクッゴクッと喉を鳴らして、ココアを一気に飲んでいった。想像以上に美味しかった!! 「え?それ、飲み過ぎじゃね?チビのくせに」 「プハッ!おいしくて、とまらなーい!」 一気に飲んで、なかなか止められなくて、お兄さんが慌てて私の手を止めた。私はお兄さんに缶を差し出すと、 「おにいちゃんものんで!うまいから!」 とご機嫌に言うと、お兄さんは楽しそうに目を細めて笑った。 「俺が勧めたからだろ」 「いいからのんで!プハッて」 「え?そこまでやんなきゃダメなの?」
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