第2章 大人の事情

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「雪子ちゃん、お迎えきたわよー」 保育園の教室で保育士に呼ばれて振り返ると、そこにいたのはお母さんではなかった。 「雪子ちゃん、帰るよ!」 家から見える距離のところに住んでいる範子おばちゃんだ。長い髪を後ろで一つに結んで、いつも白いブラウスに黒のパンツ。お迎えに来る時は、素足にサンダルだ。 私の後ろから、 「ほら。ボーッとすんなよ。ユキコ。かえるぞ」 とまるで本当の『お兄ちゃん」のようにそう言って、シゲルは私のバッグとリュックサックを持ってきてくれた。 「今夜もさ、真波たち遅いんだって。うちに泊まってきな」 「おばちゃん。いつもすみません」 私はリュックを背負ってそう言ってペコリと頭を下げると、おばちゃんはニコッと笑って私の頭をガシガシと撫で回す。 気がついたら、それがもう日課になっていた。週末には、やっとお父さんもお母さんも揃うけど、お母さんはそれでも時々忙しくて呼び出されて出かけてしまう。お父さんは私を膝に乗せて、絵本を読んでくれたり、子供が見るような番組を一緒に見てくれたり。 でも、本当はそれでも、ものすごく寂しいんだ。 お母さんは忙しそうに歩き回って、テレビではよく見かけるけど、実際に会ったのはいつだったのかさえ、わからなくなる時があった。
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