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むしろ弟の宗佑と予想しているのは『あぶない組織の人』ではないかということだった。
だから、無難に対応して欲しいというのが店長である弟の、彼への接客方針だった。
この男、週に一回か二回、多い時は三回来る。有りがたい常連様だけれど、客商売をしているといろいろなお客がやってくる。それでも商売をしている以上、どの方も大事なお客様だ。それは忘れてはならない。
今日も静かに食事をして、何事もなく帰ってくれたらそれでいい。彼が騒ぎをおこしたこともないし、文句を言われたこともない。こちらが第一印象で決めつけるのはよくないけれど、どう見ても……目つきが、風貌が『怖い雷神様』の絵を思い出す、そんな風貌なのだ。
彼が来るとランチで華やいでいる空気が一変することがある。特に女性客はやや怯えた表情に固まり、目線を逸らす。トラックドライバーは食後にくつろいでいるところ、そそくさと店を出て行く。誰も彼もが彼の異様な厳ついオーラーに凍り付いてしまうのだった。
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