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「そうだな。また来て欲しい人から使ってくれたらいいもんな」
「じゃあ、早速、手配について調べてみるね」
テキパキとカウンターの片隅にあるパソコンを立ち上げると、そこで弟も美鈴をじっと見つめている。
「ありがとな、姉ちゃん。姉ちゃんがいてくれてほんとよかった。それに……無事で、良かった」
思い出したくなくて美鈴からも言えなかったけれど、弟も姉が女性として嫌な思いをしたことも気遣って、いままでそっとしてくれていた。
「大丈夫だよ。私も宗佑が撃たれなくてよかった。なにかあったら、莉子ちゃんがひとりになっちゃうじゃない。そんなの絶対だめ」
「うん。でも俺、助けられなかった」
その後に続きそうな言葉に美鈴は身構える。そして宗佑もそこで黙り込んだ。
あの人が来てくれたおかげで助かった。タイミングよく警察が来てくれたけれど、もし警察への通報が遅かったら、あの人を頼るしかなかっただろう。
でも弟はその先を言わない。言いたくないのだと思った。美鈴も言えない。あの人のおかげと姉弟で喜べないのは、あの人も、この店を荒らし悪行を働いた男達とおなじ世界にいる『ヤクザ』だからだ。
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