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8.シュガーブルーの夜
雨上がりの夕方、まだ少し波立つ港の向こうは鮮やかな茜の空が広がっていた。
潮の匂いも濃く、店のドアや窓を開けているとふわっと入ってくる。
子供の頃から見てきた港の空、海、そして匂い。今日も同じだと、美鈴はほっとするように微笑み、胸いっぱいにその空気を吸い込んだ。
本日のディナータイムも満席になった。お洒落なOLさんたちに、トラックドライバー、そして残業中か残業帰りの独身ビジネスマン。こそこそと待ち合わせをするような男たちはもういない。
閉店前、ざっと通り雨が降った。雨が上がると月が見え、また濃い潮の匂いが開けている窓から入り込んでくる。
長いお喋りを終えたOLさんたちが閉店時間と知って、最後に精算を済ませた。本日の営業が終了する。ドアにクローズの板を掛け、灯りを落とした。
美鈴はレジ締めと、パソコンに経理の記録を打ち込む。宗佑は片づけと明日の仕込みを始めている。
店内の照明も半分落としてほのかな灯りの中、レジ締めをする。開いている窓から、湿った蒸し暑い潮風が流れてくる。
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