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この部屋は、美鈴がよく知っている潮の匂いがする。もうジャケットの匂いはないけれど、彼の皮膚の匂いに鼻先を擦りつけて、美鈴は彼の熱い皮膚に、刺青のある背中にしがみついていた。
ベッドで重なってすぐ、彼が『俺のこと、怖くないのか』――と聞いてきたけれど、美鈴は『怖くない』と答えて彼に抱きついた。
挨拶のような口吻はなく、彼は美鈴の頬にキスをすると、そのままそっと耳元、首筋、そして胸元に優しくキスを落としてくれ……。そうして優しくしつこく、大きな手が時々意地悪に美鈴の肌を弄んで、ずっと熱く愛してくれる。
彼の熱を感じながら、美鈴の肌もしっとりと汗ばんでくる。
彼の背中の模様が、うねる海の嵐のように見えてくる。
最後、彼のキスが美鈴の下腹で止まる。そこから先、躊躇っているのがわかった。
俺なんかとこんなことになっていいのか。でも俺は欲しい。欲しいけれど。美鈴の肌をじっと見つめて迷っている、そんな彼の憂う眼差し……。彼の黒い目、その目に美鈴の胸は甘く締めつけられる。
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