2.ヤクザさんでも、常連様

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2.ヤクザさんでも、常連様

「しばらく、様子を見よう。手荒いことをするような人には見えないよ。とっても落ち着いているし」 「うん、そうだな。先入観、良くないよな。それに接客なら姉ちゃんのほうが経験もスキルもある。姉ちゃんがそういうなら様子を見る」  美鈴は元々、大手コンタクトセンターで『SV』をしていた。コールセンターのオペレーターから、そのオペレーターを管理する『スーパーバイザー』、つまりリーダーのようなポジションまで手に入れていた。なのに辞めた。  テクニカルサポート、クレーム対応、さらに生産性を向上させるなどの細かい管理仕事は嫌いではなく、やり甲斐もあった。お客様と話すのも大好きだった。長く勤めてSVを任されたのに……。  その接客スキルを『うちの店で活かしてくれ』と弟に頼まれた。  そうしていま、弟の店のフロアを任せてもらっている。  弟が持っている携帯電話が鳴る。着信表示は『莉子(りこ)』とある。弟の妻。美鈴にとっては義理の妹になる。 「うん、俺。ああ、いま大丈夫。客いないから。身体、大丈夫か。気にするなよ。こっちに降りてくるなよ」
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