3491人が本棚に入れています
本棚に追加
2.ヤクザさんでも、常連様
「しばらく、様子を見よう。手荒いことをするような人には見えないよ。とっても落ち着いているし」
「うん、そうだな。先入観、良くないよな。それに接客なら姉ちゃんのほうが経験もスキルもある。姉ちゃんがそういうなら様子を見る」
美鈴は元々、大手コンタクトセンターで『SV』をしていた。コールセンターのオペレーターから、そのオペレーターを管理する『スーパーバイザー』、つまりリーダーのようなポジションまで手に入れていた。なのに辞めた。
テクニカルサポート、クレーム対応、さらに生産性を向上させるなどの細かい管理仕事は嫌いではなく、やり甲斐もあった。お客様と話すのも大好きだった。長く勤めてSVを任されたのに……。
その接客スキルを『うちの店で活かしてくれ』と弟に頼まれた。
そうしていま、弟の店のフロアを任せてもらっている。
弟が持っている携帯電話が鳴る。着信表示は『莉子』とある。弟の妻。美鈴にとっては義理の妹になる。
「うん、俺。ああ、いま大丈夫。客いないから。身体、大丈夫か。気にするなよ。こっちに降りてくるなよ」
最初のコメントを投稿しよう!