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「きらきらしていて、とても眩しいのです」
こいつはこの星影の街を気に入っている。目を奪われてしまったのだ、この街で出会ったいくつもの光に。
とても眩しい。と、紫苑は小さな声でもう一度呟いた。もう随分とここにいると言っていたが、それは平凡なカラスとしての時間の感覚だ。八咫烏の体にとっては、それもほんの僅かな時間に過ぎないのだろう。
眩しくてたまらないこの街の光も、いつか散ってしまう。紫苑も、チサも、それを何度も繰り返しているのだ。俺にはきっと耐えられない。人間の俺には、きっと耐えることができない。
神にとっては自分を残して周囲が変わって行くのは当たり前のことなのだろう。しかし、当たり前だからと言って平気とは限らない。まだ行かないでくれと、何度手を伸ばしたのだろうか。そしてこれからも、幾度となく繰り返すのだ。
「チサ様にとっては、『彼』がとても輝いて見えていたのでしょうね。その光の軌跡を、彼女は追っていたのだと思います。見付けてどうするのかは、分かりませんが……」
「光の軌跡、か……」
やはり、海だろうか。
「おや。晃一さん、何か思い付きましたか?」
漆黒の瞳が興味津々な様子で俺を見る。俺はこいつの目にはどう映っているのだろう。どう見られたいんだろうな、俺は。
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