探偵稼業は楽じゃない

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 信人はウンウンと頷いて事務職の女の子が運んできたホットコーヒーに砂糖とミルクを入れた。今日三杯目だ。いい加減甘いコーヒーを卒業しないと糖尿になるかもしれない。ウオーキングを一日四十分しているが、プラスマイナスゼロだろう。自分の身体について考えてから信人は眉間に皺を寄せた。糖尿病だけはいやだ。ああ、こんなことを考えている場合じゃない。仕事をしなくては。信人は茶色い封筒を少し沙也の方へ移動させる。 「写真、見ますか?」  沙也は両手を合わせてギュッと握ると、ジトっと掌に汗をかいているのが分かった。沙也は夫の浮気を疑ってから夜が眠れなくなって精神科に通院している。体重は五キロくらい減った。だが夫もなぜか同時に痩せたので周りの人は夫婦でダイエットをしたのかと訊いてくる。沙也も夫も太っていたわけではないので皆んな首を傾げたが。沙也は夫が浮気をしているかもしれないなんて言えないので上手く誤魔化していた。 「夫のことで痩せちゃったんですよ」 沙也はここが探偵事務所なので正直に言った。信人は糖尿病のことを考えていたのを見抜かれたような気がした。
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