第一章、奇跡の魔女と傭兵

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薄暗い個室で、男は目を覚ました。 瞬きを繰り返し、視界を安定させる。 「…此処は…」 「あっ…カスール兄さん!目が覚めたのね…良かった」 「ハル…?」 男の新緑色の瞳にはまだあどけなさが残る少女が映った。 「あっ、寝ぼけてる。此処は私達の家よ」 「家…?」 「そうよ、村の孤児院。兄さんが運ばれて来たときは本当に驚いたんだから!」 「運ばれて…お、俺を運んでくれた奴は?」 身体を起こそうとするが、上手く力が入らない。 「待ってて、呼んでくるから」 「……」 無理に起き上がる事を諦め、ベッドに背中を預けた。 (…俺、どうなったんだ…?確か、あの時…) カスールは目を閉じて思い起こす。 「魔物に、首辺りに噛みつかれて…」 手で傷があるだろう箇所に触れてみる。 「傷がない…!?確かに噛みつかれたはずだってのに…」 驚愕の事実を語った独り言は、あっさりと拾われた。 微かに聞き覚えのある声。 「…驚くのも無理はないわ。普通なら死んでいても可笑しくない傷だったもの」 「だ、誰だ!」 開いたままドアから、女が入ってくる。 二つに結った茶色の髪が揺れる。 「…命の恩人に対する態度とは思えないわね」 「命の恩人…?」 「そうよ。貴方が今こうして会話出来るのも私のおかげ」
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