12人が本棚に入れています
本棚に追加
言った通り痛みは引いていった。
「…どういうことだよ」
「契約による拘束。ヒトは契約を結んだ魔女の強い命令には逆らえない。そして…貴方の右の親指にある指輪」
「指輪?」
右手を上げて親指を見る。
身に付けた覚えのない指輪が其処にあった。
「これは…」
「契約の指輪。それが私と貴方が契約を結んだ証となるものよ」
「何だよ…それ…勝手にこんなもん付けんなよ!」
「だから、貴方を助けるには其しかなかったからって言ったでしょう?それとも、あの時死にたかったの?」
死にたかったか。
カスールはその問いに答える事が出来なかった。
暫く沈黙が続く。
重い空気が部屋を満たす中、ハルが戻ってきた。
「ちょっと兄さん、叫んだりして大丈夫なの?」
「ハル!逃げろ!こいつは…!」
「魔女でしょ?知ってるけど…」
あっさりと返答する。
「何!?知ってて何で…」
「だって悪い人…じゃなかった。魔女じゃないもの。兄さんの代わりに色々手伝ってくれてるし…」
ハルは小さな鍋をベッドの横にあるテーブルの上に置いた。
「おかゆ、置いておくから食べてね。食べて余裕があるようなら皆に顔をみせてあげてね」
「お、おう…」
「ミオゼさん、すみませんが暫く兄を見ていて下さい」
「わかったわ」
最初のコメントを投稿しよう!