第一章、奇跡の魔女と傭兵

4/29
前へ
/749ページ
次へ
言った通り痛みは引いていった。 「…どういうことだよ」 「契約による拘束。ヒトは契約を結んだ魔女の強い命令には逆らえない。そして…貴方の右の親指にある指輪」 「指輪?」 右手を上げて親指を見る。 身に付けた覚えのない指輪が其処にあった。 「これは…」 「契約の指輪。それが私と貴方が契約を結んだ証となるものよ」 「何だよ…それ…勝手にこんなもん付けんなよ!」 「だから、貴方を助けるには其しかなかったからって言ったでしょう?それとも、あの時死にたかったの?」 死にたかったか。 カスールはその問いに答える事が出来なかった。 暫く沈黙が続く。 重い空気が部屋を満たす中、ハルが戻ってきた。 「ちょっと兄さん、叫んだりして大丈夫なの?」 「ハル!逃げろ!こいつは…!」 「魔女でしょ?知ってるけど…」 あっさりと返答する。 「何!?知ってて何で…」 「だって悪い人…じゃなかった。魔女じゃないもの。兄さんの代わりに色々手伝ってくれてるし…」 ハルは小さな鍋をベッドの横にあるテーブルの上に置いた。 「おかゆ、置いておくから食べてね。食べて余裕があるようなら皆に顔をみせてあげてね」 「お、おう…」 「ミオゼさん、すみませんが暫く兄を見ていて下さい」 「わかったわ」
/749ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加